ついこの間まで失業してて、あまりにお金が無いので毎日野菜を食べてたんです。
この新宿区の片隅には個人商店だかなんだか知らないけど、小さな八百屋が幾つかあり、何故か野菜がとても安いんです。きゅうりが1本10円とか。信じられないくらい安くて、そんな八百屋の中でも一番安いものを見つけて、切ってポン酢を掛けて食べたり、炒めたり似たり、レンジでチンしたりしてなんとか食いつないでいたんです。
そんな時、いつのものように八百屋に行ったんです。そしたら水菜が一つ(ビニールに入ってて5束くらいまとめて売っている)100円だったので、まあ特別安くないけど買おうかなって。
レジに持って行ったらレジ係のおばあちゃんに「これ今日は3つで100円なのよ」って言われて。頭が真っ白になって。「水菜が3つで100円?ありえないだろ・・・」と思う事すら出来なくて・・・無力な私・・・。
「どうします?1個だと35円なの」響き渡る彼女の声。それはもしかして「次の君」?あ、もう入ってます!黒夢入ってます!八百屋の話だけど黒夢入ってます。「あ・・・」言えない。何も言えない。
「水菜はあそこですよ」と言われるがまま、水菜を2つ取ってレジに持っていった白日に晒された・・・「吐息」?「夢?」それとも・・・。
水菜が3つ入ったビニール袋は無職の自分には重すぎました。右の肩が少し下がってるのがわかる。レジで「水菜は今日は3袋で100円なの」と言われた時の無力感、虚脱感。自分が昔から何も変わっていない人間だという事がよくわかった。
そう、高校時代に黒夢を聴いていたあの頃と何も変わらない・・・
というわけで昔書いた、過去を振り返る系の筋肉少女帯のレビューが自分の中で好評だったので、今日はそれの黒夢バージョンです。
黒夢との出会いは、「ロッキンf」(笑)の真ん中の白黒ページのマイナーバンドの最新活動告知コーナーみたいな。そこに「名古屋の黒夢がファーストCD『中絶』をリリース」みたいな記事を見たんですね。写真はまだ4人の写真でした。
え?黒夢?これがバンド名?この手のお化粧バンドの(ヴィジュアル系という言葉はまだなかった)バンド名といえば英語が普通なのに。しいもんきいみたいなのはいたけど・・・。
キワモノ系?黒百合姉妹(フールズメイトの広告で見たことがあるだけだった)のパクリ?とか思ったんですけど「中絶」というタイトルや華麗なルックスに「あ・・・新しい闇が見つかった・・・」とか思っちゃったんですね。ま、要するに友達がいなかったんです(涙)
KUROYUME COMPLETE RARE TRACKS 1991?1993?インディーズ全曲集?
- アーティスト: 黒夢
- 出版社/メーカー: onemake records
- 発売日: 2000/06/10
- メディア: CD
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「中絶」
「中絶」はexかまいたちのベースのモグワイがやっていたホーンテッドレコードからリリースされたんですよ。確かBANANA FISHっていうバンドも同時にリリースされて。雑誌にもバンバン広告が出てましたね。
それにしても「中絶」って・・・。まるで殺害塩化ビニールみたい!変なタイトル!
この手のお化粧系の曲のタイトルとしては斬新でしたね。他のバンドはほとんどが英語のタイトルで、1曲だけ「憂鬱」とか「殺意」とかあるのが流行りだったし。うわー!エクスタシー!
友達のいない高校生なので、「中絶」って聴いただけでもう頭の中は大変ですよ
中絶ってまさか・・・いや、そのものを歌ったことじゃないだろう・・・
中で絶たれた・・・夢・・・そうそれは孤独を表しているんだ・・・
絶たれた中で佇む・・・孤独の私・・・
要するに友達がいなかったんですね(涙)いたらこんな曲を買おうなんて思わないですよ。しかし私は買いました!なぜなら友達が(以下略)
「インディーズ」なんて言葉が浸透してなかった当時、しかも長野の田舎でも市内で1軒だけインディーズのCDが売ってるところがあったんですね。少しだけでしたが、いつもCOLORの「激突」とデカメロンの「名曲アルバム」が売ってました。まだ売ってそう!!そこにさすが世界のホーンテッドレコード!「中絶」も売ってました。手に入ったのは雑で汚いアートワークのセカンドプレスでした。
そしてさっそくラジカセ(恥)で聴いてみました。胸は高鳴ります。
「新しい闇・・・早く・・・」とか思ってたんですけど、聴いてみてびっくりしました。初めて聞くとジャリジャリのツタツタに狂ったような歌声。
落ち着こう!とばかり歌詞カードを見たんです。そしたら本当にびっくりしました。
愛撫に明け暮れた 人形に身映る
鏡張りの部屋で 白日を感じた
あれ?これって
蛇に似た容姿は 体内で吐血を
結ばれる儀式は 間に合わない事を
あれ・・・サビまで行って確信しました。「これってラブホで避妊に失敗して中絶させちゃって悲しいって曲なんだ・・・」って。
そのわかりやすさに呆然としました。そりゃ、リアルな感じで悲しいよ・・・闇はどこにいったの・・・そのひねりのなさと、わかりやすさに憤慨しました!これじゃ「等身大の自分OK」ってことじゃん・・・大黒摩季かよ!!!ビーイング!!当時は尖った若者なので皆が好きそうな音楽=くだらない音楽と思ってたんです。
しかもサウンドはグシャーとしてましたが、メロディはキャッチーで聴きやすい。2曲めの「浮遊悲」と3曲めの「IN SKY」は意味不明系ダークで好きな感じでしたが、「中絶」の等身大の自分OK振りが衝撃的で、ちょっと興味を無くしてしまいました。今はこの曲、もちろん好きですよ!
「生きていた中絶児」
引き続き「ロッキンf」や「フールズメイト」で黒夢の存在は確認していましたが、等身大事件の余韻を引きずってしばらく避けてました。
そんな時、憂鬱なプールの授業があったんです。スイミングスクールに通っていたので泳げるんだけど、飛び込みができなくて・・・。糞体育教師にそれをチクチクいつも言われて「アイツいつか殺してやる」とか思ってたんです。そんな私の目に、目を疑うような文字が飛び込んできたんです。
プールの横の建物のガラスに「生きていた中絶児」って書いてあったんです。そこは水泳部の部室でした。よーく見ると「黒✝夢」「清春」「臣」なんて書いてあったんです。なんで水泳部に・・・。今だったら「MEJIBRAY」とか「えんそく」とか書いてあるようなもんですよ。
探りを入れてみると、なぜか水泳部で黒夢が流行っていたらしい。どんな水泳部だよ。しかもあまりにアレな感じで怒られたらしく、文字は消されてました。
そんなこんなで「生きていた中絶児」を聴いてみました。これ、オリコンインディーズチャート1位だったんですよね。しかもあの大槻ケンヂもタイトルを聞いて死ぬほど笑ったらしい(清春に言っていた)。さすがですね。
内容は「中絶」より前にリリースされたデモテープの音源化ですね。なので、ちょっとアングラというか一つ前、って感じですが、音質は「中絶」よりだいぶマシというか全然こっちの方がいいですね。この後の「亡骸を・・・」よりいいかも。メンバーもインディーズの音源じゃ一番お気に入りだったらしいですね。
バンド名の元になった1曲めの「黒夢」はシブくてこれが一番好きです。
まずはスローにベースが3連符のテーマを提示して、それを変化させたギターリフでスピードアップ!インテリジェンスが感じられる曲構成です。
その後の「同じこの夢と暗い体ぁ~」と延々と繰り返される歌もかっこいいです!これこれ!こういうの待ってたよ~って感じです。歌詞が短くて限定されているのが、暇な頭(デザビエ風表現)にはぴったりでしたね
最後の「NIGHT!!!黒夢がぁーー」で発狂するところとかカッコいいです。これだ!と思いましたね!「そう・・・私は気が違った黒の存在・・・」とか思いましたよ。いやー友達がいないって悲しいですね><
暇だったので歌詞を読み込んで「黒夢ってこういう事?」って考えて頭の中で整理したりしてみました
図1:根暗高校生の考える「私なりの黒夢とは?の図」
ちなみに、2曲目の「狂い奴隷」もシンプルなタイトルとシンプルな楽曲で好きです。3曲めの「磔」も好きですね。はーりつけーはやくぅーデブらーせーてーえー みたいに発狂するところが好きでした。さすがに「楽死運命」はちょっと辛かった。まだまだ初心者だったんです
亡骸を・・・
このアルバムがリリースされる頃になると、インディーズながらフィーバーしてましたね!雑誌にも出まくり。出まくって「神なんていませんよ」「夢なんてありませんよ・・・黒夢・・・」とかネガティブWord連発して、バンギャや根暗高校生のハートを掴んでましたね!カッコイー!!!
しかしこの「亡骸を・・・」は凄い。生きていた中絶児→中絶ときて、今度は全く違うメジャー感すら漂う濃くてハイクオリティのアルバムです。漂わせていたアングラ感がなくなりながらも、世界観を一気に広げてきた感じです。長い過程を経てこうなるんだったらわかるんですけど、「中絶」の次がいきなりコレですからね。やっぱり売れるバンドは違います。
1曲め「UNDER」から行ってシブいですね。直線的だった「中絶」の頃からメロディの緩急に併せてバンド・サウンドがガンガン走ったり、少し音を少なくしたり、すごく聴きやすいです。
それに・・サビの慟哭のメロディ・・・「フロム、ディープアンダー、ディープアンダー、ネクスト、ノー!」
ネクストノー!これは凄い!英語の辞書に載せよう!ディープアンダー!ネクストノー!この前東急の渋谷駅に行った時にこの言葉を思い出しました。
2曲め「終幕の時」はタンゴを思わせるような官能的なリズムに「ヲイヲイ」とうなるボーカルがセクシーな怪しげな1曲
3曲め「DANCE2 GARNET」は当時は情報が少なくて知らなかったけど、前進のバンド「GARNET」の曲なんですね。ちょっと毛色の違うエイトビートのポップな曲で、ほんと「中絶」の頃とはレベルが違います。
5曲目「十字架との戯れ」はタイトルからいって最高ですね。この「俺、退廃的なかっけえタイトル思いついたわ」みたいな競い合い。これこそヴィジュアル系!「退廃的タイトル総選挙」やってほしいね!あ、曲もメリハリの効いたバンドサウンドがいい感じです。
6曲目「MISERY」7曲目「if」はメジャー感が漂う、でもダークでソフトで美しい2曲です。この辺まで聴くとやっぱりギターの臣さんが凄いなって気づくんですよね。フレーズに無駄がなくて、かつ感情が伝わってきますね。
そして9曲目「親愛なるDEATH MASK」 前の「生きていた中絶児」をグレードアップした元祖発!狂!系!狂った基地外の私!!!
ヴィジュアル系の発狂系テンプレそのままです!
- おどろおどろしいベースソロからスタート
- イントロには狂った赤ん坊のような基地外変声
- 少ない歌詞!意味不明!病的!
- やたら残酷!殺す!死ぬ!発狂!
- 歌詞ともつかない言葉でメロディをうたう イッツォローンリサー!
- ギターも発狂!最後はフィードバックノイズ!
- ドラムはツタツタツタツタ ハイハットとスネアを交互!
- 最後の最後にボーカルがラスト発狂きました~放送禁止用語連発!ピーなし!
- ウヒヒヒ・・・ゲヘヘ・・・アハハ(笑い出す)
迷える百合達~Romance of Scarle
そして「地獄へ落ちます」との宣言と共に、メジャーデビューをした黒夢。この時、ヒストリーブックみたいなの出したんだけど、メジャーという地獄wに行く黒夢に当てた濃いファンからの文章みたいなのがあって、それがメチャクチャイカレてて超笑ったんだよねーまた読みたい
やっぱりfor dearの衝撃がすごかったですね。かなり大々的なデビューで、Mステなんかにも出て、Jリーグの番組のタイアップ(当時は必須要素でした)なんかにもなるし、しかも曲調もまたポップになってるし、でも良い曲なんですよね・・・
「迷える百合達」も結構期待したんですが、当時はなんか微妙っていうか地味に感じましたね~今は好きなんですよ!まあ厳し目に聴くと「for dear」以外こじんまりして、これって曲が無いんですよね。でも後になってみるとそういう地味さ加減が好きみたいな聴き方もありますよね。
ソフトダークな感じで、真似し易いと思うのですが、案外この路線をやった後輩はいませんでしたね。
Cruel
これは先行シングルの「ICE MY LIFE」がカウントダウンTVのオープニングになったりして、メジャーになじんでるなって印象でしたね。
またどうせ前みたいなのかな、と思ったら意外に激しくて結構好きです。
「意思薄弱」といえば、「短命の百合達」っていうライブ・ビデオがあって、「意志薄弱」の前に清春氏が寸劇?MC?をするんだけど、その内容が
「音楽の授業で人の前で歌えって言われたけど歌えない 先生は怒るけど歌えない そのうち給食で食べたコッペパンが喉から出てきてオエーオエー そんな・・・僕は・・・意思・・・薄弱」とか言って曲が始まっててびっくりしましたね。せっかくだから完全再現してほしいですね。
feminism
そんでもってオリコン1位!!!のフェミニズムです。臣さん脱退の際にはびっくりしましたねー 「音楽性の違いが・・・」とかじゃなくて「来なくなった」って。「札幌の雪まつりで女の子と歩いてたらしい」とか雑誌でメンバーが言ったりして。「メジャーの売れっ子バンドにいるのにそんな来なくなっちゃうなんて」って当時はピュアなので思ってたけど、今だったら「そんな事もあるかなあ」って思いますね。まあその後シレっと再デビューしたのにはびっくりしました。まあ人生色々ですね。
ますますメジャー色を強めて先行シングル「優しい悲劇」はびっくりしましたね。BメロでCメジャーになるんですよ。まあ「亡骸を」の「if」でもちょっとメジャーコードが入ってきてるのですが。でも「優しい悲劇」は売れる気マンマンなのを隠してないのを置いておいても、良い曲だと思います。
アルバム自体はすごくいい出来だと思います!かなりのポップ思考ですが、ここまで来ると僕は好きでした。その時やりたい事をやるのが、ミュージシャンに取っては一番幸せですよね。開き直ったかのような「Happy brithday」やさわやかポップス「眠れない日に見る時計」なんてそりゃー売れるよオリコン1位だよって感じですね。この頃もう上京(埼玉だけど)していたので、フェミニズムツアーも観に行きました!でもバイトだったかも?忘れちゃった。
FAKE STAR
フェイク・スター?アイム・ジャスト・ア・ジャパニーズ・フェイク・ロッカー
- アーティスト: 黒夢,清春,人時,是永功一,佐久間正英,西平彰
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1996/05/29
- メディア: CD
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そしてフェイクスター!これを前後して、「ルナマティーノ来てポーズきめてんじゃねえ」(ペニシリン?)や「喫茶店に入ったら俺の歌が流れてて、でも下手くそだなと思ったら他人の歌だった」(ディルアン某さんのI'll??)や大先輩である元DIE INさんボーカルの人に喧嘩売ったりなど血色が荒かった岐阜の大スターさん。徐々にパンク色を強めて、歌詞がそれっぽくなって、しかしオケはデジタルを導入するなどかなり過度期なアルバムです。「ピストル」とかいい曲ですよね。
この頃は完全に洋楽とか、渋谷系><に目覚めていたので、結構冷めた視点で聞いてました。なんか、僕も年を取ったんだなぁって。清春さんバーターバーターって何をそんなに怒っているの?まあいろいろあるよね・・みたいな感じでした。
そしてこの後、パンク路線を本格的にスタートして、大ブレイクされるわけですが、自分が聴いた黒夢のアルバムはこの「FAKE STAR」が最後となりました。後のなんとかドラッグとか聴いたことないんですよね。
というわけで、ここで終わりです。
黒い夢は途切れておわったわけですが、僕の黒い夢もまさしく途切れて終わりました。でも、今でもまっ昼間の八百屋で感覚が蘇るほど、身体に根付いてるんですね。
やっぱりそれは若くて孤独だったw時に聴いたからなのかな。若いと孤独は同義語と見る面もあり、それは誰もが同じだと思うんですよね。
つまり・・・過去は美しい!ああ。便利な言葉だ。
というわけで終わりです。