さわやかトラウマ日記

さわやかな音楽ブログです from 2004


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【映画の感想】「夜空はいつでも最高密度の青色だ」失くしてしまった景色On Parade

今日は休日でした。美容院へ行ったあとどうしようかな、と思い、またいつもの「上田映劇」へ行くことにしました。

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素敵な映画館でこれからひとり映画鑑賞です!「夜空はいつでも最高密度の青色だ」という作品ですーお客様は3人!三人祭……

 

行くのは3回目です。1回目と2回目に関してはこちらに感想文を書いておりますのでよかったら御覧ください。

maemuki.hatenablog.com

本日鑑賞したのは「夜空はいつでも最高密度の青色だ」という作品です。

www.yozora-movie.com

前回のように、特に映画について詳しくは調べずに行こうとしましたが、少しくらいは知っていてもよいだろうと思いしらべました。

原作は「最果タヒ」という詩人。素敵なお名前ですね!タヒね!その映画と同名の詩集から映画にした。ということでした。よくわかりません。詩はあってもそこにストーリーはあるのでしょうか。

そして、気になることが書いてありました。それは「新宿近辺の景色が山ほどでてくる」と書いてあったことです。そして、主人公の男女は二人ともともに東京で暮らしていて、片方はお金のために昼の仕事と夜の仕事の二重生活であり、1人は底辺の現場作業員であり、とても貧しいくらしをしている。ということです。

「新宿の風景がたくさんでてくる映画」なんて沢山あることは、承知しています。

それでも「なんだかイヤだなあ〜」と思ってしまったことに理由があります。

 

僕は、かつて新宿区に住んでいました。8年くらい。人生の一番良い時をすごしたと言えるところでした。今は、離れた地において、思うことは新宿で暮らしていたあの頃のことばかりです。

そんな映画を、帰ってきたくなかったこの地において、見るなんて。なんてことなんだろう。

でも、そんなことくらいしか楽しみがないのです。だから僕は行きました。映画館に。

 

冒頭、「二重生活」の主人公の女性が出てきます。昼は看護師、夜はガールズ・バーの店員。看護師なのに病院の裏でタバコをフーフー吸うのが印象的でした。そんな彼女が冒頭につぶやいた「詩」に僕は心を奪われました。

都会に恋することは、自殺をすることに等しい

 このような文言だったかは、はっきり覚えていませんが、そのように記憶しています。

ほんとうにそう思ったから、覚えていたのでしょう。僕は都会に恋をして、自殺してしまった、ような暮らしを送っている現状がありました。

 

主人公二人はいつのまにか、映画のような偶然の鉢合わせを繰り返し、そして映画のようにお互いに存在を認識していきます。

主人公の男性は、片目、左目が見えない、ということで「普通じゃない」ということで、普通じゃない自分を演じようとして、おかしくなっている、と周りには思われてしまいます。だから、誰でもできる肉体仕事を選んだ。本当は、頭の良い人、進学校に通っていたエリートだった。

彼が働いてところは、本当にひどい環境でした。ゴミのようにひとを扱う、そのようなところ。そんなところが、本当にあるのでしょうか?あるのです。哀しいのですが。事実として。フィリピン人も、日本国が作った制度にて奴隷のようにこき使われている現状があり、映画でもそうなっていました。

 

彼女、主人公の彼女はトラウマを抱えていて、どこかおかしくなっている、そんな自分にイライラしています。常に「死」に関することばかり繰り返してしまう。主人公男に「僕に何をしてほしい?」と聞かれと「死ねばいいのに」と言いました。彼は当然に怒ります。映画ではこのあと、彼の周りで次々と人が死んでいきます。貧しい暮らしのためです。社会に見殺しされた。ゴミのように捨てられて死んでいった。

彼はそのうちに、弾丸のようなおしゃべりを止めて、塞ぎ込みます。しかし、彼女が心を開いたことで立ち直る。その最後の場面は本当に素晴らしかったです。

最後まで彼女が普通の人なら、口にするだろうある言葉を、口にしたのです。その流れ、僕は「あの言葉」を口にするだろうと、感じていました。

そうしたら、見事に言ったのです。その言葉を…その言葉は…「ありがとう」です。

 

「ありがとう」という言葉に感動するなんて。僕は感傷的になりすぎているのかもしれません。

仕方ありません。

事前の情報があったとはいえ、自分が失くしてしまった愛しい景色が、どんどんどんどん出てきました。パッと映っただけで「あそこか」「あの辺りだ」「あそこには歩いていったな」とか考えてしまう。目に焼き付いてしまった景色が、目にしたくない景色しかないこの地にて、見せつけられる。ひどい現実です。辛い。この日観客は5名ほどだけでした。こんな気持ちでこの映画を見ていた人は、果たしてこの中にいるのだろうか。なんて考えたりして…

 

キャストですが、主演の女性、石橋静河 この方を全く知らなかったのですが、無理もありません。この映画が初主演だった。それは観て納得しました。彼女はこの演技以外に主演をしたことがないから、ここまで主人公になりきれたと考えています。

彼女がどういうところから出てきたのか知りません。失礼ですが「美人だから」という日本映画界ではあたりまえの事での採用ではなかった、と感じました。ごめんなさい。でも、彼女はどんどんどんどん綺麗になっていくのです。彼に心を開いて彼がなけなしのお金で買った「1200円のヘア・アクセサリー」を身に着けたところから「似合わないけどね」と嬉しそうにしたあたりから、綺麗になっていった。あれは演技ではできないことです。

池松壮亮さん。「注目のイケメン俳優」なのかな、と思っていました。最初の方は「僕は変だ」ということを思い込んでいる、という設定から、早口の弾丸のセリフなど「ちょっときびしいかな」と思っていたのですが、だんだんと役と一体になっていったような気がします。プロの俳優さんでした。

この映画には重要な脇役が1人います。田中哲司さんが演じる「いつもズボンのチャックが開いていて腰がわるい全てがわるいもう死ぬかも」という、労働者役の人物です。つねになさけない顔、もうだめだという顔をしています。でも周囲に影響されて「コンビニのバイトの女の子」に恋をしたりして、ものすごく演技がうまい。あたりまえですが。

そんなこんなですが、あまり客観的にこの映画を見ることができなくて残念でした。新宿に住んでいる時に観られたらよかったのにな。と思いました。

残念です。

おわり