さわやかトラウマ日記

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【映画の感想】ポール・トーマス・アンダーソン「ファントム・スレッド」ほんのりとした憎しみと愛

僕の「3大映画監督」の一人、ポール・トーマス・アンダーソンの新作「ファントム・スレッド」を新宿武蔵野館にて、鑑賞しました。

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「3大映画監督」の残りは、狂人で異人デヴィット・リンチ、撮る映画はすべてメリーランド州ボルチモアの変態大王ジョン・ウォーターズ、です。ポール・トーマス・アンダーソン、略してPTA!は、映画「マグノリア」が僕のいちっばん好きな映画だ、ということもあり「3大入り」をさせました。

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 映画のレビューというものは、これが最初でした。それがあんなに増えてしまった。しかし、「マグノリア」の後にも、「ブギーナイツ」そして恵比寿のガーデンシネマ(いったんなくなる前)で「パンチドランク・ラブ」をみました。終わった後にうごけなくなるほどになった、ということしか記憶がありません。その後「ザ・マスター」「There Will Be Blood」も観ました。彼はまだ若い。今、47歳。前のふたりのおじいさんと比べてほんとうに若いです。同年代とはいえないけど、こんなに若いだなんて、改めて、思ってしまいます。

彼の映画はどんどん、むつかしくなっているように、僕は感じていました。しかし世間の評価はうなぎのぼりです。この「ファントム・スレッド」の主演、ダニエル・デイ=ルイスは「There Will Be Blood」でアカデミー主演男優賞を獲りました。そしてこの映画が、引退作になるとのことです。

 

この映画の存在を僕は、観た当日の朝まで知りませんでした。映画の情報というものが、どうもうまく入ってきません。前は上田映劇で上映されるものをすべてみていたので、探すということをしなかった。それは前に東京に住んでいた時も同じでした。しかし、彼の映画はなんとかみていた。それは、彼がまだ若い、どんどん新作を発表できたたということもあるかもしれません。

朝、なんとなく、今日は映画がみたいな平日だけど、と思い、この前行った新宿スカラ座で何か上映されているかな、と思い調べたところ、どうもその映画はみたくないと思い、近く武蔵野館で、夜に会社が終わった後に上映される映画が、たまたまポール・トーマス・アンダーソンの新作でした。ほんとうに運が良いと思いました。おそらくこのまま知らずに、上映は終わったいて、また口惜しい思いをしたのかもしれない。さっそく行こう、と、オンラインで席の予約をしました。

席を予約したのは、僕が、一人目でした。

 

昔、少し昔のロンドンが舞台のようです。ダニエル・デイ=ルイスが演じる主人公は、おめかしに時間と手間をかける老齢の男性、職業はドレス職人でしょうか。顧客は貴族階級の女性たち。主人公はかなり老け込んでいるように、見せています。ダニエル・デイ=ルイスはまだ61歳。役作りを当然しっかりしている、本当のベテラン俳優だなあと感じました。靴下の履き方、帽子をかぶり方。歩き方。階段の降り方。すべてが「老齢の麗しいドレス職人」そのものでした。

ポール・トーマス・アンダーソン監督作品の大きな特徴として、彼自心が脚本を手がけているということです。自分は英語がわかりませんが、語羽は似通っているかな、とも感じました。それは彼のどの映画でも使われていた「FUCK」が、中間でやっとこさ出てきたときにも感じました。ひとつのことばが、違う解釈で誤解、または正解となり、またひとつの新しい感情が広がっていくような。主人公は、ウエイトレスに恋をし、彼女のためにドレスを作りたいと言い、家に引き取ります。そこには、長年連れ添ってきたマネージャーの妙齢の女性がすごみを効かして待っていました。

 

まず強く印象に残ったのは、主人公ウッドコックが一流のオートクチュールの仕立て屋ということが示された場面です。ひじょうに不機嫌なおそらく貴族階級の女性が、彼が作ったばかりのドレスを着て、そのすばらしい出来栄えに空気がかわったような場面です。この映画はアカデミー賞の最優秀衣装デザイン賞を受賞したとのこと。それは後わかったことでしたが、うなずけました。

そしてウッドコックが恋をした女性、Vicky Kriepsが演じるアルマ。スタイルにも顔にも何もかもに自信のない女性に彼がドレスを作りたい、なぜなら、彼のドレスが一番似合う体系だから、とされていました。確かに似合っていました。これから何かがはじまるような、そんな物語、ラブストーリーなのかな、と感じました。

 

そのとおりのラブストーリーでした。違いはありません。しかしそこはやはりポール・トーマス・アンダーソンです。お互いを愛し合い、そして憎しみあう。そして傷つけあい、しまいには、、、。彼には拭いきれないトラウマがあった。それは服にも込められていた。アルマのことは映画ではあまり語られなかったような気がしますが、それは僕の認識力が甘いだけかもしれません。

この映画はラブストーリーではありましたが、決して甘い映画だけではない。苦しみがかならずそこにある。愛することは苦しいこと。そのような感情。。

僕には、まったくわかりません。が、これが大人の恋愛なのかな?と思いました。生きるしか死ぬか、で殺し合いとはならない。でも、殺すことはする。ゆっくりと、そして最期まで添い遂げたかどうか、はわかりません。最期も最後も描いてはいなかった。

それが「大人の映画」なのでしょう。語らずも描かれる。台詞の字数は多いけど、核心は突かない。ポール・トーマス・アンダーソンらしい映画である、と感じました。

 

他に、最後に出てきた彩り豊かな風船たちが舞う、美しいパーティー会場の場面が、とてもすてきでした。すてきな映画でした。映画にて、自分がまったく知らないような感情や場面が体験できて嬉しくもあった、というのがこの映画の感想です。おわり。