さわやかトラウマ日記

さわやかな音楽ブログです from 2004


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【音楽】僕が古い音楽ばかり聴いてレビューも古い音楽ばかりなっている理由

先日、NHKEテレクラシック音楽館」にて、NHK交響楽団パーヴォ・ヤルヴィ指揮によるオルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」の演奏が放送されました。

wikipedia-- カルミナ・ブラーナ

この公演は、昨年に定期演奏会として開催された時のもので、自分は行きたかったのですが、平日でやむなく、観にいくことができませんでした。なので、放送はとても楽しみでした。

オルフの「カルミナ・ブラーナ」この曲は、本当に凄い曲なのです。7世紀〜10世紀に誰か、おそらく庶民たちが書いてであろう幾つかの手記が発見されました。それが見つかったのは、18世紀の初旬のこと。編纂がされ、出版されたものが「カルミナ・ブラーナ」です。そうして、オルフがこの「カルミナ・ブラーナ」の存在を知り、矢も盾もたまらず、神的なインスンピレーションから、驚異的なスピードで作曲された曲が「カルミナ・ブラーナ」です。

内容は、当時の深いキリスト信仰、教会の大きな力、そして一番の庶民の敵であったであろう貴族たちへの皮肉、憎しみ、そして庶民達のつつみかくさない、生きることの喜び、愛、欲望、性への関心などが、感じられる文章で成り立っています。

オルフは、自分の生涯でこの曲が一番の曲だ、と言っていたようです。確かに神的ななにかが満ち溢れていて、生命力、美しさが、ゴージャスなオーケストレーションと合唱と独唱の歌手によって、聴くたびに、深い感動を覚えます。

この曲の一番のキーポイントは「おお!運命の女神よ」と題された主題が、最初と最後に出てくることです。

www.youtube.com

この部分は、よくテレビや映画で使われているので、ご存知の方もいると思います。

この曲が、最初に演奏され、紆余曲折を経て、最後の最後に、突如にまた現れる場面。どんなものにも運命に逆らうことはできない。庶民も、商人も、教会も、貴族も。さてはて、そして神はどうなのか?のような問いかけを、僕は感じます。

そして、この曲が凄いのは、「世紀を跨いだドラマ」があるということです。7〜10世紀に誰かが書いたかわからない文章が18世紀初頭に発見され、20世紀にオルフが作曲をした。それを今、21世紀に演奏されたものを、自分が聴いているということ。

凄いと思いませんか?

 

しかし、この「カルミナ・ブラーナ」が作曲されたのは、1936年です。たったの83年前です。僕にしてみたら、そう感じます。100年も経っていないなんて。まあ、古典的なイディオムを持つ楽曲ではあります。当時としては、もしかしたら時代遅れだったのかもしれません。が、古典的なイディオムを守るべき背景があった、ということもあります。世紀を跨いだ文章に対する、尊敬があったのか、と想像します。

 

こういうスケールは、ポピュラー音楽には無いものです。だから僕はクラシック音楽に惹かれてしまうのです。そういう面で考えたら、現代の音楽は全てやすっぽく聴こえてしまって、僕は今の音楽に興味が持てないのです。

 

更に、こんな事もありました。

maemuki.hatenablog.com

またN饗ネタですが、傾倒しているわけではないのであしからず。昨年、「クロード・ドビュッシー没後100年」と題した演奏会を聴きに行きました。

素晴らしいプロのオーケストラの磨かれた音色と、憧れの一流ピアニスト、ウラディミール・アシュケナージが指揮を取る姿と、「100年残った」音楽たちを楽しみながら、休憩の際、外にちょっと出ました。そうすると、隣の代々木公園では何からのフェスティバルが開催されていたらしく、聴こえてきたのは、ロックバンドの汚い音、耳をつんざく騒音、押し付けがましい男性ボーカルでした。ああ、音楽はこんなことになってしまった。ひどいことになってしまった。ドビュッシーが生きていた頃とは、全く別の世界になってしまった。

たった100年なのに。音楽は進化しすぎているのではないか?

と、僕は思いました。

あまりにも、音楽が進化しすぎていると、最近思うのです。

クラシック音楽も「無視された聴衆」の状態になってしまい、現代音楽のようなものだけが、今は出ている状況、または、聴衆にひたすら媚びた「ヒーリング音楽」のようなものばかりです。

ポピュラー音楽は、僕が知っている限りでも劇的な変化を遂げて、短期間で遂げてしまって、もう変化の限りは尽くされた、と僕は感じています。

しかし、僕はポピュラー音楽がどのような変遷をたどってきたのか、その全てを知らない、しかし、好きな音楽、今、好きな音楽はあります。それは、ブラジル音楽であり、自分が産まれる前の音楽も、当然聴きます。アントニオ・カルロス・ジョビンジョアン・ジルベルトらによって創設されたBossa Novaは1958年から始まったとされています。そして今、現在も、ブラジル音楽はMPBの時代を超えて新しい、僕にとっては新しい音楽があるのです。

それは、ブラジル音楽だけではない、他の音楽でもまだ自分が知らない世界が、過去の音楽にはある、と思うのです。自分はもっといろんな音楽を知りたい。クラシック音楽は、この世で一番「沼が深い」音楽です。到底、生涯の間に全てフォローなんて、できません。

なので、新しいつまらない、もう進化が感じられない音楽にわざわざ時間をかけたくない、という理由から、古い音楽ばかりについて、このブログでは触れるようになりました。

 

終わり