さわやかトラウマ日記

さわやかな音楽ブログです from 2004


さわやかでまえむきな人間になりたい男が
好きな「文化」を語る。
そんなブログです。from 2004yaer。

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ストリートで音楽するなら、殺される覚悟でやれ!


エイブルのCMは素晴らしい
「ネットで探せるエイブル〜♪」とストリートミュージシャンが歌い
「歌詞がサイテーね」とOL風女がぼそっと話しながら前を通っていくエイブルのCM。
これはいいのだろうか。
「ネットで探せるエイブル〜♪」とフレーズに合わせてギターを動かす仕草、安易な曲調、
Bメロでのアホ丸出しのコーラス、と完全にストリートミュージシャンを馬鹿にしている。
「日本ストリートミュージシャン協会」みたいなものがもしあったら、重大クレームがくる
のではないか。もしくは(例)ゆずに影響され、上田駅前で路上ライブをはじめた
長野県田中義明くん(19歳)(持ち歌は『君に伝えたくて』『FOR MY LIFE』
『素直なキモチ』等全てCのコードを基調としているのが特徴)があのCMを見て怒り狂い
エイブルにクレーム、なんてことはないのだろうか。
それ程に、ストリートミュージシャンのイタい部分を短い中に完全にパッケージしている。
企画した人は何かストリートミュージシャンにの恨みでもあるのだろうか。
もしかして俺の生霊がその人に取り憑いたのではないか。


俺はストリートミュージシャンが大嫌いだ。
といっても全部が全部キライなわけではない。
たま〜にいるジャズの人や、なんかドラムを叩いている人は上手ければかっこいいと思う。


何故キライなのか。元からああいう人達のああいう音楽が嫌いだというのもがあるが、
病的なまでに拒絶をするようになったのはあるきっかけがある。


ある晴れた日曜日、俺はバイトをしていた。
どうでもいい、しょーもないバイトである。マンションの看板持ちだ。
某池上線の駅前にて、「駅前のロータリーのへんに看板を持って立っててくれ」という指示に
従って立っていた。晴れていたし、暖かかったし、人も適度に多くて割と機嫌よく俺は立っていた。
しかし、小型アンプを持った畜生どもに俺の安息は破壊された。
ロータリーの一部を陣取り、女二人組がなにやら始めようとしている。
ボーカルと、ギターの二人組だ。
悪い予感に身を任せると、それは必ず現実となるような気がするので、いつも悪い事は考えない
ようにしている。俺はその女二人を黙殺することにした。


「こんにちわー!!!!!」


予感は的中した。彼女らはアンプを用いてそのロータリーでライブを始めたのだ。
人通りが多く、またヒマな人が多いのかにすぐに人垣ができた。
俺が看板をもっている場所とも近い。丁度彼女らのすぐ後ろといった感じである。
ボーカルの女はまずは自己紹介をし始めた。
普段は4人組バンドであること、自分達の音楽を色んな人に知ってもらいたいと
いう事で今日はここでライブをするということ。そして何故か函館出身なのをやたら強調していた。
何故そこまで函館出身を強調し、まるで誇らしげな事実を提示、そう自慢をするかのように
話すのか。俺は看板を持ちながら「????」と思っていた。

曲が始まるとなんとなくわかったような気がした。
産業‥‥産業ロック。
大衆の指向に合わせ、一番わかりやすく、進化を遂げたお金儲けが見込まれるロック‥
そしてそのボーカルの歌い方‥フレーズ終了部分に少し甘えた感じの表情を作る
‥ああ、そうJUDY AND MARYYUKIに明らかに影響されている。
YUKIの出身は函館だ。やたら函館出身を強調するのもわかるような気がする
「私が第2のYUKIなの〜〜〜」と言いたいのね。


「そんなのは個人の趣味であなたがたまたま歪んでいるだけだ!」と言われる事を覚悟で書くが
そのバンドの曲は俺が生涯聴いた音楽の中で最低の部類だ。
ヘタクソとかではない。ドラムとベースは打ち込みだし、ギターは恐ろしい程没個性のマニュアル
通りのプレイだし、ボーカルは「カラオケまぢで朝までいけるょ」といった感じのカラオケ唄いで
別に聴きづらくはない。
その詞と曲‥わざわざ俺の神経を逆撫でる為に産み出されたのではないかと犯罪者なみの勘ぐりを
してしまう程なのだ。
「夢は見るものじゃない 叶えるものだから♪」
サニーデイ!サンデイ!こんなにぃいい天気ぃ〜♪」
「勇気を持って 一歩を踏み出そう きっと きっと きっと 叶うよ〜ぉ〜イエイ!!」


もうかなりの前の事なのに、結構覚えている。それ程のインパクトだったのだ。
もちろん曲はつまんないので覚えていない。没個性の「ジェーポップ」だから。
あまりの詞のクオリティに頭がくらくらしてきた。俺は何をやってんだ。


その内に寒気、吐き気を催してきた。「身体が受け付けない」というやつだ。
追い討ちでYUKIちゃん2号はMCをかける。

「私たちは‥音楽を通して皆さんに夢を与えること、勇気をもってもらうのが夢です!」
「今、女性限定で、『みんなのゆめ』を書いてもらってます。いっぱい集まったら何かの形でまとめる予定です」


私は貴女達にここから去ってもらうのが夢です!と書いて渡そうと思ったが、女性限定とのこと。フーン。


彼女らを見つめるギャラリーは結構増えてきた。熱心にカメラで写真を撮るダサい男もいる。ファンらしい。


容赦なく攻撃は続く。しかし俺は逃げ出す事ができない。こんな所でこんなくだらない仕事で、こんなめに
何故合わなくてはいけないのだ。汗が噴出し、顔が歪む。
恨んでやる。
呪ってやる。
祟ってやる。
きっとそのときの俺の顔は鬼に近かったのだろう。


彼女達の攻撃の最中、一人の知らない中年男が話し掛けてきた。
「おいおいおい、何でそんな顔しているの?」
「‥‥ああいう音楽、大キライなんです」
「いやーでも可哀想じゃん。彼女達、君のこと気にしてチラチラみてるよ」
「別にファンの人達がいるからいいじゃないですか」
「でもさあ‥」


人間はひとつじゃない
人間誰もがわかりあえる、そんな事はない
このオッサンに何を言っても俺の気持ちはわかってくれない
彼女らの奏でる音楽が、いかに苦痛であるかは彼女らはわからない
俺だけは動く事もできずその攻撃に耐えなければいけない
おかしい。
表現の自由は認められるが、表現されたものを拒む権利はないのか
もし、俺がもしその場でナイフを所持していたら、阿鼻叫喚の地獄絵巻が
そこで起こっていたかもしれない。
人前で何かをやる。人前で何かを言う。それはとても勇気のいる行為だ。
その対象が不特定多数となる公衆の場所だったら尚更だ。
その勇気を超えて何かをやったからといって、良い事ばかりではない。
彼女らは俺が殺意を持っているということを気付いていたのだろうか?
まさか自分達の音楽がこれほどまでの苦痛を他人に生み出すという事を考えなかったのだろうか
わからないに違いない。
大変失礼な言い方だが、そこまで頭が回る人達は、ああいう音楽をやらないと思う。


テレビ、ラジオで嫌な音楽かかったら消せばいい。
CDを聴いて違うと思ったら止めればいい。破壊するのもいいだろう。
店で嫌な音楽が流れたら出ればいい。


街角で動けない状態で、大キライな音楽を嫌というほど聴かされた時はどうすればいいのか。


「殺せばいい?」
さすがにそれは大袈裟だが、そう思う人間がいたとしても不思議ではない。
逆にストリートミュージシャンは「殺される」覚悟でやっているのか?
やってないだろう。


信じていればいつか叶う。勇気を出して。信じあおう。君が愛しい。
彼らの頭の中は平和だ。たまに現実社会の大人が嫌になるくらいだ。


結局俺は、その場を去った。
看板をもって、人気の無い所へ避難した。身体は震え、脳内物質は嫌なもので溢れ返っていた。吐きそうだった。
仕事がどう、とかどうでもよかった。自分の生命、社会的な自分の崩壊の危機を感じ取ったのだ。


去る途中に、人垣の間からボーカルの彼女とわざと目を合わせた。
俺は中指を立てた。攻撃だ。
何故そこまで俺に嫌われたのか、彼女は理解できないだろう。
俺も彼女らの音楽が理解できない。
共存は無理である。だからこそ、街角で不特定多数に向けての攻撃が、「違う」人間に対して
どれほどの感情を産み出すのかを考えなければいけない。



ストリートで音楽するなら、殺される覚悟でやれ!