新宿は豪雨 あなたどこへやら
今日が青く 冷えていく東京
そんな歌を今日思い出しました。
確か、東京事変の「群青日和」でした。ギターを弾いて歌う椎名林檎が印象的なPVでした。「東京」が何度も出てくる。そういえばバンド名も東京事変だ。
僕は東京が恋しい。
なので、この曲を思い出したのかもしれない。
もうそれは手の届かないところにある非現実となりつつある。
しかし、そんな中でもなんとか一人生きている。本当に一人。誰もいない山の家でたった一人。今日で3日め。明日もひとり。
ある日僕は「NEWS ZERO」を観ていた。真ん中の特集コーナーに、HなんとかZとかみたいなよくわかんないバンドが紹介されていた。
全然知らなかった。ピエロの扮装が怪しげで少し興味を持った。ピエロの鼻は色違いになってるらしい。メンバーカラーがあるとかアイドルみたい。
そして、トリオ、「H ZETTRIO」の演奏が始まった。
ふーんJAZZのピアノトリオかと思った。しかしそこで奏でられる音楽は予想を裏切るものだった。
"Beautiful Flight" / performed by H ZETTRIO 【Official MV】
ハイスピード!ハイスピード!グラインドコアより速いのではないかというスピードにのせて、ピアノ、とベースとドラムが自由に唸る。
ただ、めちゃくちゃに弾いてるわけではない。メロディがあってコードがある。コードはジャズのコード。
これはすごい。この人達は何者なのか。とりあえず、ピアノの人は?
調べてすぐわかった。この人は自分の中では「ヒイズミ」さんと認識している人だった。東京事変でその前にバンドもやっていたと記憶してる。そのくらいの認識だった。
番組が終わりかけの時に「今、人気がすごいんですよ iTunesで1位なんです。とアナウンサーが言っていた。ので、早速僕はApple Musicを開いた。
検索すると、すぐにアルバムが出てきた。リリースされたものはほとんど網羅されてるっぽい。素晴らしい。罪悪感はある。
でもその罪悪感なんか、吹っ飛んでしまった。
番組でも演奏されたアルバム「beautiful flight」のタイトル曲「beautiful flight」この曲を聴いて・・・
とおもったけどその前の「プロローグ」が凄い。プロローグ、何かがこれから起こる。まだ起きていない。からプロローグ。左で高速分散和音を奏でながらメロディが弾かれる。そして曲が始まる。
この曲は高速爆裂で疾走する曲だが、はじまってハッとする爽やか、鮮烈な明るいメロディがピアノで奏でられる。一般的なポピュラーミュージックでいえば「サビ」がある。ドラムもベースもピアノも超絶技巧のビートにのせて、爽やかな「解放」の歌。まるで天国のよう。
この曲は「beautiful flight」というタイトルがある。美しい飛行。戦う曲なのか?でもそんな説明はどこにもない。歌が無い。言葉が無い。ジャズは自由だ。音楽は自由。音楽は言葉、歌のためだけにあるものではない。「思い」を伝えるのは言葉だけじゃない。「音」だけで可能なのだ。
この曲に歌詞を付けるのを是非、ミュージシャンにやってほしい。
きっと「大空超えて 君と会う〜」とか「明日を見つめ、共に行こう〜」とかそんな感じになるだろう。つまらない歌詞。良い人の歌詞。良い人が良い人に向けて歌う。良い人じゃない僕には苦痛。
僕はこのバンドの音楽に感動するとともに、とてもショックだった。
自分もピアノトリオをやりたいなと思っていた。
こんな感じの自由な、今までのジャズにないような、めちゃくちゃな音楽がやりたかった。
でももう今は東京じゃない。
ここでは一緒にやる人も見つからなさそうにないし、スタジオもなさそう。だから、メンバーが羨ましい。東京だけでなく全国を駆け回り、活躍している。チケットどこもソールドアウト。
何より僕には才能が無い。ヒイズミさんのような才能は無い。それが20代だったらよかったけどもう40になってしまった。枯れた男の情けない音楽しか残せない気がする。でもそれでもいい気もする。比べるのがおかしい。
H ZETTRIOの音楽を夜中、爆音でスピーカーで聴いている。
信じられないくらいの爆音でも、誰にも怒られない。誰もいないから。
最新のアルバム「PIANO CRAZE」も素晴らしい。とにかく全曲素晴らしい。
PIANO CRAZE[EXCITING FLIGHT 盤]
- アーティスト: H ZETTRIO,H ZETT M
- 出版社/メーカー: apart.RECORDS
- 発売日: 2016/09/07
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僕はずっと一人だけど困らない。寒いけどストーブはある。灯油もある。近くのコンビニまで歩いて往復4時間だけど、事前に食料は買ってある。
トイレもある。お湯も出る。
僕は幸せなんだ。僕は幸せなんだ。だから戦おう。
H ZETTRIOの音楽は美しいだけじゃない。攻撃性もある。
危険な音楽。でもそれは自分に対しての威嚇である。
戦え!何を!人生を!そう音楽が言葉ではなく伝えてくれる。
聴きたかった音楽、やりたかった音楽をやっている人が現実にいる。
だから、戦おう。僕も。空に向かって羽ばたこう。
そして僕は今日、東京事変の「群青日和」が椎名林檎の作曲ではなく
ヒイズミさんの作曲だと知った。
「椎名林檎さすがだな良い曲作るな」と思っていたが、ヒイズミさんの作曲だった。
そして聞き返して「新宿は豪雨」という歌詞があるのを発見した。
新宿・・・僕は新宿に住んでいた。忘れられない思い出の街。少しだけ切なくなる。
あとびっくりしたのがアフラックのCMの曲が入っていた。「あしたのワルツ」
アルバムを聴いて不意にこの曲が流れてきて、何かの冗談かネタかと思ったけど、もちろん彼、ヒイズミさんが作った曲だった。アルバムには爆裂ジャズだけじゃない、いろんな曲がある。こういう曲もあっていい。
この曲は楽譜になっていて販売されている。420円。買えるかな。
僕は今、お金がない。働いてないから。
でも負けない。戦おう。