今日は午前4時半に目覚めてしまった。
最近はこんな感じで早く目覚めることが多い。
そしてまた寝ようとする。
しかし眠れない。
夜はお薬のおかげで眠れているが、早く目覚めてそしてまた眠れないというのは
不眠症の症状の内に入るのだろうか。
諦めて起きてパンを焼いて、インスタントコーヒーと、ポテトスープの粉のやつを入れて飲んだ。トースターのせいでブレーカーが落ちた。暗い。まだ夜なんだ。手探りでブレーカーを引っ張って元に戻す。
朝食をなんとなく食べたまま、陽が上がるのを待った。
雪はどれくらい降ったんだろう。まだ見えない。
そして僕は音楽を聴いた。
そして「ああこの曲を弾きたい」と思った。
電子ピアノ。
この家は山奥で周りの家とも離れている。夜中に大音量で音楽を聴いても、そしてピアノを弾いても大丈夫だ。
弾き終えた僕は、書きかけていたこのレビューの続きを書こうと、今書いている。
自分のチラシの裏なのに、アクセス数とか評判とかを気にしてしまう。
何年も前に書いた記事が、なぜか「TOP10」に上がってくる。
それはGoogleからが殆どで、僕のブログの過去の記事は上位に上がって来ることがおおい。
今日現在、というか最近ずっとTOP10に上がっているこの記事
なんでだろう。さっそく「中谷美紀 食物連鎖」で検索するとAmazonの次に表示されている。
卑しいと思われても仕方ないが、こういうのは嬉しい。
でも、未だに「中谷美紀 食物連鎖」で検索をする人がいるのが驚く。
中谷美紀はあれから更に芸能界では大きな位置となり「大物女優」の一員になった。
デビューから所属していたスターダストをやめて個人事務所を設立した。
スターダストや他の芸能事務所と業務提携などをしている個人事務所なのか、まったくの独立した事務所なのかは、わからない。
しかし、独立は彼女にとってメリットとなっているようだ。
以前では考えられなかった、トーク番組やクイズ番組など、幅を広げて伸び伸びと活動している。
そしてやはり、歌手活動はしていない。その理由はわからない。
金銭的な背景か?女優の仕事の方がモチベーションが高いから?
彼女が残したその作品たち、それが残っていることは事実。そして「中谷美紀 食物連鎖」と検索する人たちも多くはないけど(このブログのアクセス数は微々たるものです)存在する。
ということで今日は2ndアルバムの「cure」をレビューします。
8曲入り。既発のシングル3曲入り。2枚組でもう1枚は「Aromascape」という癒し系の坂本龍一の曲。アロマでの癒しを意識したらしい。
そう、坂本龍一。世界的な音楽家。その名声について僕が説明するまでもない。坂本龍一が「女優の歌」をプロデュースした。これは凄いこと。でも坂本龍一のwikipediaには「砂の果実」しか触れられていない。おかしい。
このジャケット。
真っ黒。
黒い。本当に黒い。
よく見ると下に cure miki nakatani
とある。黒の中のうっすら映えるとした名前も黒い。このアルバムは確かに黒い。
サウンドは明るかったり、マイナーコードだったり、歌詞が絶望的だったりするのだが、とりあえず「黒い」
そして、やはり彼女の声は悲しげだ。
1,いばらの冠(作詞:松本隆 作曲:坂本龍一)
前回のアルバムには参加していなかった松本隆が作詞として2曲参加している内の1曲。
松本隆先生の詞については、至るところで絶賛されていて、筆舌尽くしがたいのだが、この歌詞は傑作のひとつではないだろうか。
強烈な贖罪意識が彼女を貫いて苦しめている。それは恋愛のことだろうか。禁じられた愛なのか。
「あなたのガラスの家 私 壊したみたい」という歌詞から、不倫の曲だという声もある。でも、そうとも限らないと思う。
「あなたのガラスの家」、家とは彼の心ではないだろうか。もろくてこわれやすいガラスの家。壊してしまったと感じたらどんな気持ちになるんだろう。
曲はスローペースながら、どこか目的を持って「ある場所」を目指して淡々と進んでいくようなイメージが浮かぶ。
彼女は進む。その場所へ。そして天使になる。
僕はそう捉えた。「天使になる」とは僕が書くと陳腐だが、この歌詞上では聖なるものに聴こえる。
このシングルバージョンのジャケットを見たとき、衝撃を受けた。
なんて美しい。美紀様。
そしてこの曲のイメージが完璧に表現されていると感じた。
「彼女、曲の主人公は入水自殺をした」と推察するのは簡単だが、「死」は「生を維持しないこと」だけではない。硝子の家のように壊れてしまい、水になって漂う。
彼女の歌は悲しい、だけど煌めいている。このアルバムはまだ1曲め。まだまだ続きます。
2、天国より野蛮(作詞:売野雅勇/作曲・編曲:坂本龍一)
都会的なサウンドで、荒れた古いビル、北米アメリカの廃れた街を飛びまわるような退廃的な曲。作詞は売野雅勇 前作「食物連鎖」で素晴らしい詞を見せてくれた偉大な人。この曲でもタイトルから想像力が膨らむ。天国より野蛮、天国より野蛮なところとは「どこ」かまたは「そういう感じ、感情」なのか。
相変わらずの醒めきったボイスに乗せられて、淡々と進むこの曲。彼女は彼を救いたいらしい。それが伝わってくる。そこは「天国よりも野蛮」なのに「空の青さに泣きたくなる」現実、現実の厳しさなのか。そこは「時々美しい」「君を土足で辱める 悪夢から君を救いたい」こう書くと、甘いラブソングなのだが、スピーディーに処理される感情が、「野蛮」だと感じさせる。
この曲は確かCMソングに起用されていたと思う。そこで流れていた
Bメロ「明け方に見つけた 虹はどこか不吉さ 君のこと失くした 夢を見たみたいに」のところの美しさにハッとした。本当にCMで流れていたかは、ソースが取れなかったのだが、サビではなくこのBメロ的なところフューチャーしたところにセンスを感じる。
淡々しているけど、やっぱり美しく、残酷。そして悪夢のような次の曲へ続きます。
3.「砂の果実」作詞:売野雅勇/作曲・編曲:坂本龍一
もともとはドラマの主題歌で坂本龍一がsisterM(坂本美雨)で英語詞でリリースされたものを、日本語にして、こちらもシングルでリリースした。おそらくこの曲が一番のヒット曲だと思う。
そして、一番暗い曲。
ほんとうに歌詞が暗い。
でも、中谷美紀の声は、暗さを超越しているのでこの曲でも、あまり問題なく聴こえるような気がする。
貴重な坂本龍一との共演VTRがありました。おそらくミュージックステーションです。
事前トークで「何かお互い言いたいことありますか?」と聞かれて中谷美紀が「もっと優しくしてください」みたいなことをいって、坂本龍一が「もっと歌の練習をしてください」と言って和やかな雰囲気でした。ほんとですよ!笑顔の裏に何かがあったかもしれませんが。
中谷美紀 with 坂本龍一/歌詞:砂の果実/うたまっぷ歌詞無料検索
この歌詞、本当に暗いです。
「あの頃の僕らが 嘲笑って軽蔑した 恥ずかしい大人に あの時なったんだね」
とあります。どんなことなんだろう。ちょっとわかりづらいです。
「あの頃の僕らが 嘲笑って軽蔑した 空っぽの大人に 気づけばなっていたよ」
歌詞を読みながら聴くと、本当に自分のことのように聞こえてきます。
僕は堕落した大人。あの頃に嘲笑っていた惨めな大人。
弱虫の偽善者。生まれてこなければよかった?僕は砂の果実、氷点下の青空。
砂の果実は食べられない。氷点下の青空は美しいけど、凍えて、死ぬ。
でも、最後に救いがあります。
「僕のこと 誇りにしてるって つぶやいた声に 泣きたくなるいまでも」
歌詞は男言葉で書かれていますが、性差は感じられません。
傷ついた魂に、性差はない。砂の果実が空で消えてこの曲は終わります。
4. 水族館の夜 (作詞:松本隆/作曲・編曲:坂本龍一)
既発シングルの多いこの曲の中でも貴重なオリジナル曲ですが、これが驚くほどの名曲です。ネットでこの曲の評判を漁ったことはないのですが。あまりに素晴らしい曲で「この曲のために”cure”を買ってもいいと断言できます。中谷美紀の曲で一番僕が好きな曲かもしれません。
まず「水族館の夜」というタイトルから、イマジネーションが膨らみます。
中谷美紀さんと夜の水族館を歩いたら、どんなに素敵なんでしょうか。
青く暗い水槽が並び、魚やクラゲが泳いで、それを2人で見つめます。ふとすると中谷さんは消えていて、どこからか美しい声だけが聞こえてきます。あなたは幻だったのか?不敵な笑みを浮かべる彼女が見えます。
みたいな!
でもこの曲は「水族館の夜」を表した曲ではありません。
その言葉は最後に出てきます。まるでそこのようだと。彼女は沈んでいます。
愛した人と別れた、または裏切られた。すごく愛していたのに。
曲はかっこいいドラムのフィルインからはじまり、ピアノ、ストリングスが上品に響く、とても美しい曲です。女性が部屋の中で水のリズムを感じる、それはおそらく雨の音だと思いますが、曲のスケールの大きさ、メロディの美しさで、単なる部屋と心象の描写だけではない、素敵な景色が見えます。
水族館の夜を感じさせるほどに孤独。ひとり。彼女はひとり。
寂しいけど美しいメロディと声に、なぜか癒やされる。
魚やクラゲがゆらめく水族館。あふれるイマジネーション。この曲は最高です。
この曲はすごく名曲なのに、Youtubeにカバーすらありませんでした。
ニコニコ動画にはあるのかな?
よけいなお世話ですが、ピアノで弾いてみました。
すみません>< あくまでイメージです。ご参考にしてください。
ちなみに「いばらの冠」もあります。よかったら聴いてください><
5.鳥篭の宇宙(作詞:中谷美紀/作曲・編曲:坂本龍一)
前作の「TATTOO」に続いて自作詞。
åあちらも怪しげな感じだったが、こちらは違った意味であやしげ。
世間から隔絶された二人が、お互いを慰め合い悲しみを共有するような歌詞。
このあとの中谷美紀の作詞でも似たような閉塞感を感じる。
そんな危険な言葉たちでも、声が美しいからあっという間に聞けてしまう。
6.SUPERSTAR(作詞:ボニー・ブラムレット/作曲:レオン・ラッセル/編曲:坂本龍一)
カーペンターズのカバーで知られるスタンダードな曲。
原曲は悲しげなメロディに悲しい詞。
中谷美紀バージョンはダウナーなビートに歪んだエフェクトが掛かった、このアルバムらしいカバー。
歌詞も悲しく、失恋の歌。
Don't you remember you told me you loved me baby
You said you'd be coming back this way again baby
忘れたの?私の事、愛してるって言ったよね?
ここに戻ってくるっていったよね?
淡々とこれを彼女に歌われると、まるでドラッグかお酒でやられてしまった女性が歌っているようで、サイケデリック。cureというには危険すぎるけど惹かれてしまう。
7.キノフロニカ(作詞:中谷美紀/作曲・編曲:坂本龍一)
「キノフロニカ」とは何か。知らない単語だ。
調べるとこちらのサイトに正解があった。
кинохроника。キノフロニカと読みます。ロシア語でニュース映画の意味。英語だとnewsreel。
ニュース映画というのは、時事問題の記録映画のこと。テレビの普及により、1970年代に映画館から消えたそうです。(広辞苑より)
キノフロニカという曲がありまして。歌ってるのは中谷美紀さんです
http://red.ribbon.to/~peachheaven/knfn.html より引用
トラックはハウス風味だが、どこかロシア風味を感じさせる。「キノフロニカ」がロシア語だと知ったからかもしれない。前作の小西康陽による「逢いびきの森で」を思わせるような短い音符。これは前も書いたけど、中谷美紀に合うと旋律だと思う。伸ばすより、そっと短く歌うとまた違った魅力が出る。作曲の坂本龍一ももしかしてその曲にヒントを受けたのかも。
また、前の曲から似たようなモチーフがある。鳥篭、2人。何かが続いているのだろう。2人を俯瞰した記録映画が彼女の中で続いているのか。「miki」までそれは続いているような気がする。
8,corpo e alma(作詞:大貫妙子/作曲・編曲:坂本龍一)
最後はラテン。サンバ。坂本龍一のラテン・ミュージックへの傾倒は知っていたので、これも違和感なく聴けた。
(ちなみに2001年にリリースされたJaques Morelenbaum 坂本龍一名義の「CASA」はアントニオ・カルロス・ジョビンをカバーした名盤なのでおすすめです!)
「精神と肉体」を表すタイトル。割りとそのままの歌詞。でもコード進行は坂本龍一らしい未来的な和声で面白い。
砂浜で踊る中谷美紀はあまり想像できない、けど本当の彼女は明るい女性、だということは実は知っている。昔の話だけど。そして最近の彼女は本当の自分をテレビで見せはじめている。
このアルバムリリースからちょうど10年。いい感じに彼女は進んでいる。
だから、歌手活動やってくれないかなーできればライブがみたいです!
よろしく中谷さん。
「cure」は「食物連鎖」に比べて曲数が少なく既発シングルが多いからか、比べて「名盤」と言われることは少ないけれど、僕はこのアルバムが一番好きです。
特に後半の曲は、最近わかるようになりました。
でもしかし!「水族館の夜」は名曲!ぜひ聴いてみてください!
ここまで読んでくれてありがとう。