殺シノ調ベ ~This is NOT Greatest Hits~
- アーティスト: BUCK-TICK
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 1992/03/21
- メディア: CD
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このアルバムについて、記事を作成したいなと思ったきっかけ。それはなんとなく勘付かれてしまうかもしれませんが、そんなこと以前それ以上にこのアルバム「殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits」は自分にとって、大きなおおきな存在だったいうことをアッピールさせてください。
このアルバムがリリースされたのは、自分が高校1年生の時でした。買ったのは、1992年の4月以降。そこまでなぜ覚えているのか。それは自分が「山奥の実家のため、高校に通うことが至難であったので、高校の近くのアパートで一人暮らしを始めた」その時だったからです。
そして、「ひどいひどすぎる山奥」から解放され、初めて田舎街のCD屋で買ったのがこの「殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits」だったのです。
BUCK-TICKは、当時、田舎の中学生たちの間でも人気のある存在でした。自分の中でそれを一番象徴的に示していることとして、ミーハーこの上ない音楽にはあまり興味がない姉が「あっちゃんカッコイイ♥」と騒いでいて(姉は面食いのケがありました)、姉の同級生からCDを借りて家で聴いていたのです。
それもそうです。「若い人なら誰でも知っている存在」でした。そんな中で、なぜ自分は「殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits」を買ったのか。
それは、このアルバムが「ヒット曲がたくさん入っているベストアルバムだから、入り口としては最適だ」と思っていたのかもしれません。それまでにBUCK-TICKのCDを買うことはありませんでした。中学生の時は、森高千里、筋肉少女帯、あと宍戸留美!そしてアルバム1枚しかまだ出ていませんでしたが、LUNA SEAのこと、でいっぱいいっぱいでした。
実際に、収録曲を見ると、それまで彼らの作品に全く触れたことの無い自分でも、知っている曲達が並んでいました。テレビの歌番組にて歌っていた曲、周りの人たちが口ずさんでいた曲、報道でよく見た曲名。
しかし、当時買う前に引っかかりがありました。
アルバムのサブタイトル「~This is NOT Greatest Hits~」です。
英語で「これはグレイティスト・ヒッツではありません」とあります。なぜこのような但し書きがあるんだろう。
「ヒット曲を集めた」ものが、「ベストアルバム」の定義だと一般的には思います。このアルバムには、ヒット曲がないのだろうか?曲名だけ見ると、そうではありません。
「JUST ONE MORE KISS」は週間チャート最高位6位、「悪の華」は週間チャート1位。同名アルバムも週間チャート1位「スピード」は週間チャート3位。「M ・A・D」は週間チャート4位。「JUPITER」はアルバム「狂った太陽」からのシングルカットでシングルチャート週間チャート8位でした。
十分に「グレイテスト・ヒッツ」です、なぜ「NOT」と敢えていれたのか。
それは、このアルバムが全曲全部、取り直し、リ・レコーディングだからだと気づきました。一から全部録音直した。とても大変なことですよね。収録曲も多いし。
このアルバムを振り返ったメンバーのインタビューを読んだことがあるのですが、こう仰っていました。
「BUCK-TICKは、ほとんど素人のままでデビューしてしまった」「なんとか形になったのは『惡の華』のころだったからかもしれない」「『狂った太陽』でプロとしてちゃんとしたものが、初めて出せた。ライブでもそれが出せるようになった」みたいなことを仰っていたと、記憶しております。
それが、自分の思い違いだとしても、実際には、その通りだと思います。アルバムを順通りに聴けば、一歩一歩進化していているということがわかります。やはり最初の頃、「Just One More Kiss」の頃は、曲、詞ともに完成されていてとても素敵なのですが、演奏、アレンジははつたない、というのが感じられます。
「これはもったいない」と思ったのでしょう。「狂った太陽」で満足のいく物が出せた。だから過去のものを新しくキレイにとりなおそう。とりなおした。からこそそのまま過去のトラックを収録した「 Greatest Hits」ではないよ、ということで「This is NOT Greatest Hits」としたのかな。そして、ある意味、過去の録音したトラックを「殺す」ということで、「殺シノ調ベ」としたのかな、なんて邪推をしてしまいました。
実際に、このアルバムに収められているトラックと、同曲の過去のトラックを聴き比べてみると、自分は先程説明をしたように、この「前」にちゃんと聴いたことがなくて、このアルバムでほとんどの曲をちゃんと音源で聴いたのです。曲は知っている曲はありました。「グレイテスト・ヒッツ」はそういうものだと思います。
「初聴きの方が印象が良くなる」ということは、誰でもよくあると思います。そのような贔屓をなしにしても、このアルバムのリ・レコーディングは見事。としかいいようがない素晴らしいトラックばかりだと思います。
1曲め「ICONOCLASM」この曲が、ちゃんとした「BUCK-TICK初聴き」でよかった、と改めて感じてしまいます。エフェクトのかかった櫻井敦司ことあっちゃんの声のかっこいいこと。アラートのような狂った今井寿のギターも素敵です。しかし理知的であり、やはり暗闇とアルバムの歌詞カードの様な、パープルの闇も感じさせます。
2曲め「惡の華」これは…カラオケで「惡の華」をいれると、もちろんのこと、オリコン1位のバージョンの方が入ってしまいます。このアルバムのバージョンが入っていたような気もしますが、わざわざ分けなければいけないほどに、違います。やはり初聴きは、テレビだったような気がしますが、こちらのバージョンの方がかっこいいです。やはりこの曲の聞きどころは最初のギターリフです。テーレテーレテレレレー このような「誰も口ずさめるギターリフ」というのはなかなか無いものです。曲はすごくシンプルです。でもその分深いです。いろいろあっての、オリコン1位でしたが、曲がよかったから、そして普通にとてもかっこよかった。ロックだったからだと、僕は思います。
3曲め「DO THE "I LOVE YOU"」これは、何度目かのサビの後にあっちゃんのエフェクトのかかった声で「ア・・アアアアア…」みたいになるのが好きです。この曲にかぎらず細かい音へのこだわり、が常に感じられるのがBUCK-TICKのよいところなのかなと。
5.「M・A・D 」原曲、シングルで出した曲、せっかくのシングル曲なのに見事見事に破壊をしてしまいました。原曲はポップでわりと呑気な感じで、「どこがMADなんだろう」と後で聴いておもってしまいました。でもこの「破壊」が裏にあった、後になって破壊されたと知ってしまうと、こわい曲に両方とも聴こえてきます。破壊とは美しい、破壊されるまえも美しい、のです。
6.「ORIENTAL LOVE STORY」聴き比べると、違いは明らか。進化しています。しかし、違いすぎる感じもあります。原曲に多かった音の隙間がなくなった。ひたすら夢見がちな異国の愛の物語り。空間は違う。どちらも愛しい景色ですよね。
7.「スピード」よくあの事件のあとで、と、当時は思ってしまいました。早熟な中学生だったのかもしれません。だから「スピード」がそれではない。問題になったものではないけれども、似たようなものを表すことばだとうことはわかりました。しかしこの曲のポップさ、異様なポップさはなんなのでしょう。ヒットメーカーとしての役割も果たした、レコード会社へのお膳立てのような曲なのに、タイトルは「スピード」男の子♪女の子♪なんて歌っていても「スピード」なのです。嗚呼。スピードとは果たして何を表すのか、そのままではないのか、わかりません。
8.「LOVE ME」「惡の華」に入っていた曲ですが、原曲とのアレンジと雰囲気は大きく変わっています。ライブではよくこの曲が演奏されていたようで、恥ずかしいのですが、テレビ埼玉で流されたライブの映像で前野バージョンをはじめて聴きました。こっちもすごくかっこいいです。というか大胆にアレンジしすぎていてすごいです。でもどっちも凄いなんて凄くないですか?夜のラブミーと深夜のラブミー。どちらがいいでしょうか?どちらもいいと思います。
9.「JUPITER」後続バンドにはあまりない、ベタなバラード、ラブ・バラードです。なぜラブ・バラードの名曲が後続バンドにはあまりないのでしょう。それは開き直りが足らないからだと僕は感じています。もっと甘くていい。もっとポップでいい。もっとわかりやすくていい。それはこの曲がメイン・コンポーザーではない星野英彦氏の作曲であるからかもしれません。ひたすらにわかりやすいメロディです。誰でも分かる曲。は恥ずかしいのですが自分もこの曲をカラオケで歌ったりしますが、やはり顔が違うので恥ずかしいです。あっちゃんような顔に生まれ変わりたい。夜空にそう願うように歌います。どれほど悔みつづけたら、一度は優しくなれるかな?なんて…。臭いのですが、歌う人によっては許されるのです。どんなにくさいうたでも!
10「....IN HEAVEN...」原曲の青臭さをそのまま残しつつより洗煉された「…イン・ヘヴン…」です。こういう基本的なエイトビート。忘れかけていた「ビート系」という言葉を思い出してしまいます。やはり彼らの故郷の大先輩「BOOWY」の影響を感じさせます。ここでは少しビートが重くなって説得力が増しています。
11「MOON LIGHT」前の曲と同じAメジャー、テンポも同じくらいでつながっているように聴こえますが、元の収録アルバムは違います。ライブを見ているような展開ですよね。燃えてきます。この2曲を続けたことは、彼らにとってのスタンダードがこのスタイルだったということの証明なのかもしれませんね。
12「JUST ONE MORE KISS」 でましたジャスキス !この曲を初めて聴いたときの驚きをまだ覚えています。この曲は難しいコードやフレーズなどは全く使っていないのですが、他の曲にはない、違う世界を描いているように思えました。AメロからBメロまでのスムーズなながれ、サビの1回聴いただけで歌詞を含めて覚えてしまうような譜割り。今井寿が天才だということを早々に知らしめた曲。世間に対してもそうでした。「後継バンド」がどのバンドになるのかはわかりませんが、この「JUST ONE MORE KISS」を超えるような完成度の高い曲は、正直あまり見当たりません。原曲との比較がひつようにないくらい、すごい曲だと思います。この曲を超えるような曲が日本のロックシーンから出てきてほしいと、今でも思っています。何十年もたったのに…。
13「HYPER LOVE」なぜかよくわからないのですが、この曲を当時たくさんたくさん聴いた覚えがあります。今聴いても、素晴らしい曲だと思います。もちろんこちらのバージョンの方が好きです。すごく聴きましたから。大きな違いは、イントロです。映画の最後のエンドロールが始まる瞬間のようなフレーズが足されています。これは原曲にはない、と後になって気づきました。この瞬間が「HYPER」なのかなと。「口唇に少し美辞麗句の爪を立てた」というのは、あまりにも退廃的デカダンスの極みのように感じて理解できない大人の世界であります。しかし今でも理解はできません。そのような言葉を使う必要がないからです。
でも、幻想の世界にはそういうものは存在する。そう考えています。そう考えるしか無いのです。高校1年生で聴いたこのアルバムをまた同じ場所で年を取って同じアルバムを聴き直して、インターネットでブログでこうしてツラツラかいているような、現実ですが、もういいのです。幻想の世界に逃げます。さようなら。さようなら。この記事もおわりです。さようならHYPER LOVE
そういえばタイトル”BUCK-TICK「殺シノ調べ ~This is NOT Greatest Hits~」”NOT”はここでは皮肉でしかない。”これは、その通りです。その通りなのです、これはまごうことなき「Greatest Hits」であります。残念ながら、そうなのです。
追記
本当に言いたい事を書けませんでした。
「全く売れてもいないのに「殺シノ調べ ~This is NOT Greatest Hits~」のモノマネする後輩バンドなんてアホらしくて笑えもしない!」ということです
おわり