ミシェル・ルグランが亡くなったという報を今日、聞きました。お歳から、いつかは来るとは思っていました。享年86歳。
僕はミシェル・ルグランについて、知ろうと思ったのはつい最近です。何十年にも及ぶ沢山の活動をまだ全部フォローしきれていません。
僕が一番好きになった、もっと知りたいと思ったのは、彼が一人で自分の曲を弾いた、このアルバムです。
Michel Legrand Plays Michel Legrand
- アーティスト: Michel Legrand
- 出版社/メーカー: Decca
- 発売日: 2002/04/16
- メディア: CD
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正直、ミーハーな心、フランス好き、パリ好きを気取りたくて、最初は聴いていました。元渋谷系バンドの世界にいたということもあり、その名前は当然のように知っていはいましたが、それは知っていただけだった、ということを感じられたのはこのアルバムです。
このアルバムは終始、たった一人で、自身の代表的な曲を、好きなように弾いているかのように、見せているこのアルバムは、僕にとっては衝撃でした。なんて自由なんだろう。そして素晴らしい表現力、たおやかさ、鋭さ、全ての音楽の要素が詰まっていると感じました。
その後に、幾つかの音源や、アルバム全曲に「Paris」という言葉入っているアルバムなんかも聴いたりしました。ちょっと頭がおかしい、そして羨ましいくらいのパリジャンなんだと思います。
彼は映画音楽の大家であり、ジャズピアニスト、として、そして作曲編曲全てにおいて、能力を発揮していた、ということは理解できました。そして素晴らしいということも。
しかし、2017年にリリースされた、このアルバムを聴いたこと、それは違う意味で自分に衝撃を与えてくれました。
Concerto pour Piano, Concerto pour Violoncelle
- アーティスト: Michel Legrand
- 出版社/メーカー: Sony Classical
- 発売日: 2017/03/10
- メディア: CD
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これは、2016年にパリでレコーディングがされて、フランス放送フィルハーモニー歓迎楽団と、ミッコ・フランクが指揮を取り、彼が作曲をしたピアノ協奏曲と、チェロ協奏曲が入っていたCDです。
ここでピアノ協奏曲でのソリストがミシェル・ルグランだということを知って、僕は驚きました。とうぜん、先述のアルバムを聴いているので達者だということは知っていましたが、演奏を聴いて、ここまで弾けるなんて。そしてここまでのクラシック音楽、純クラシック音楽のスコアも書けるだなんて。
僕は、ミシェル・ルグランには到底詳しいとは言えないけれども、クラシック音楽は「ルグランについて」よりも、ちょっと齧っています。だから、わかります。このピアノ協奏曲が、純正クラシック音楽であるということ。
モーリス・ラヴェルのピアノ協奏曲を彷彿とさせるような第1楽章から、第2楽章は酩酊的でありながらも、それに甘んじず、主題を守って進んでいきます。一直線になだらかに。映画音楽のよう、とは僕は思いません。
映画的なものを感じるといえば、もしかしたら、死を意識した作曲家の最期の音楽なのかな、ということです。第3楽章は、まるでフランス語で何かを語っているかのような譜割りで進んでいきます。
イーゴリ・ストラヴィンスキーとフランシス・プーランクを合体させたかのようなと感じた、というのは蛇足かもしれません。
切迫感がせめぎあい、光と影のような何かがそこに存在しています。ピアノは超絶技巧を極め、一定の四分音符を主題としたストリングスとピアノが戦うかのように、進んでいきます。
僕は、彼のことをまだ知らないけど、生涯、長い音楽人生において、これが最初で最後のクラシック音楽の作品として発表した音楽ということ、そして最後の録音だっということ、その音楽を知れてよかったと思います。
人生とは、美しいけど、たやすいものではない。でも美しいことは大事なんだよ、とミシェル・ルグランが教えてくれたような気がします。
偉大な、作曲家、ミシェル・ルグラン。この世からはさようならですが、沢山の作品と、この曲は、この世に残せたこと、尊敬致します。
終わり