さわやかトラウマ日記

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椎名林檎「三毒史」このレビューも毒に満ちています

 

三毒史(通常盤)

三毒史(通常盤)

 

椎名林檎は凄いと思う。まず名前、芸名から言って凄い。リンゴ・スターから名付けたという名前というのも凄い。「林檎」という到底使われないけれども、誰もが読めて知られているリンゴから取った名前。そして最初から音楽もすごかった。「無罪モラトリアム」なんて言葉をアルバムのタイトルにするなんて。凄い。誰もが思いつきそうで思いつけなかったものだと思う。その時彼女はまだ10代だった。モラトリアムまっさかりの筈の世代の少女が「無罪モラトリアム」とデビューアルバムに名付けた。

その後、彼女は約束された通りの成功を収め、やがて「東京事変」というバンドも組んだ。種を得て、子供もできた。傍からみたら、順調そのもの人生盤石安定。そして東京オリンピック2020の東京オリンピック開閉会式プランニングチームにも選出された。

 

そんな栄光の中での新しいアルバム「三毒史」 「三毒」という言葉を自分は全く知らなかった。仏教用語らしい。椎名林檎は本はあまり読まず、百科事典をよく読むという話をどこかで聞いたことがある。その学びがここで現れていたのだろう。三毒というものを、馬鹿のひとつ覚えのようにぐーぐる検索で調べたのだが、わかるようでわからないものだった 三毒とは「貪・瞋・癡(とん・じん・ち)」貪欲、怒り憎しみ、そして理知に対して無知であるという3つの毒。わかるようなわからないような。

しかし、「毒」という言葉に僕は恐ろしさを覚えた。すっかり「毒」という言葉や概念を忘れていたのだ。生活にはいつも毒が溢れていて、それを避けようともしていなかった。この世は無毒なものだと、思い込んでいたからだ。

テレビでも、毒から発生した出来事はすべて、所詮は他人事にしかすぎない。死ぬのはいつも他人ばかりと言ったマルセル・デュシャンの言葉によく現れている。そして、自分から毒を発しないように、他人からなるべく毒を浴びないようにしている、という無意識に消毒されてしまった自分に、気づいてしまった。

目の前にある、現在のもの、全てにおいて、消毒されてしまっている世の中になってしまった、とも感じてしまった。

 

三毒史」に話を戻すと、1曲目「鶏と蛇と豚」はこのアルバムを貫くような仏教感に満ちた曲、というような評論が虚しくなるほどの力強い叫びと慟哭が満ち溢れる曲。

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どこかで見た、もちろん見ている東京の風景が、そこにある慟哭のような雄叫びに占められているような、そんな由々しき現実なのか幻なのか、わからない世界が見えてしまった。ただし余韻は長く続かない。ねぶたや着物などの日本を象徴するもの、そして東京の象徴に違いないもの、オレンジに燃えるあの塔も出てくる。煽りのような警告のような英詩の字幕が、目にも心にも何故か痛い。僕はこんな曲を今までに聞いたことがない。

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宮本浩次をゲストに迎えた「獣ゆく細道」は、そのまま欲を表したもの。その欲の象徴が、宮本浩次の野獣めいた歌声なのだろう。ミュージックステーションでのパフォーマンスはすごかった。完全に獣になったような、宮本浩次を従えて、椎名林檎が終始上からの目線で冷たく見ていた。宮本浩次は野獣のようではあったが、この難しいメロディを一糸乱れず、歌いこなしていた。ハモリのパートも。獣の道は細い。気をつけなければ、道を外してしまう。

 

このアルバムの特徴として言えることは、収録曲の時間が短いということ。サッササッサとどんどん次に進んでしまう。それは良いことだと思う。毒を喰らわば皿までとはいかないのだから。

櫻井敦司がゲストの「駆け落ち者」を先行にて初めて聴いた時、僕はがっかり、するBUCK-TICKファンの顔が浮かんでしまった。申し訳ない。タイトルと椎名林檎とのデュエットというシチュエーションから、まるで悩ましいキャバレーソングのようなもものを、期待していた、僕もそうだったから。みんなもそうかな、なんて。でも違いました。むしろBUCK-TICKよりもBUCK-TICKだった。けたたましいシンバル音の洪水に、やすらぎなんてものは一切ない。それでも負けない櫻井敦司の存在感はまさに魔王であり勇者でありゆうていきむこうドラクエ2のようで格好いい。

そして今までの彼女のスタイルであるものも納められていた。ギターをかきむしり、愛をかきむしり、声もかきむしるようなラブソング。そこにはなぜか心地よさを感じ、、、なんてない。ただ見えない血の雨が降り注ぐようなギターサウンドにこちらがかきむしられてしまう。

ごほうびのようなミュージカル調の既発表曲も、影における光のなかの影も見せてくれる。これも「毒」のひとつなのだろう。

 

僕は、最近「バンドサウンド」に飽き飽きしています。このアルバムのようにひとつのエッセンスとしての曲としてなら良いのだけれど、最初から最後まで、同じメンバーが同じようなフレーズを延々延々ギターの音ばっかり、ボーカル中心の日本の!バンドにうんざりしています。るのです。

そして、東京五輪の関係者といってもいいのに、太平ムードがない、テーマも「三毒」それをこのタイミングで表現をすることに敬意を表します。

オリンピックの音楽といったら、、栄光のかけはしー♪まけないでー♪みんなひとつー♪いつでも夢を(これは良い曲)そんなに走らなかった!良いと思います。

オリンピックが終わったら、東京も終わり。なんてことはないのです。このアルバムのように東京はずっと生き続けるのです。そうですたくさんの夢と光と毒はずっと終わらない!!