僕に残されたもの、それは少しは知的でいようという愚かなプライドだけです。
ああなんて悲しい書き出し。しかしそんな事はこの宇宙においては小さな本当に小さなことに過ぎないのです。
12月11日日曜日、掲題にあります 福間洸太朗ピアノ・リサイタル「スクリャービンVSラフマニノフ」を鑑賞いたしました。
この日はスクリャービンとラフマニノフの出身地ロシアのような寒さではなく、うららかな日であったと記憶しております。会場は初めて行く場所、大江戸線の終点の光が丘駅のすぐ近くにあるショッピングモールIMAの中にあるIMAホールでありました。
光が丘は駅前が広々としていて、イオンもありそれ以外の店舗もあり、食品売場も大きく、フードコートもあったり。とても便利そうな街で良いなと思いました。
さてスクリャービンVSラフマニノフについてですが、この2人はモスクワ音楽院の同級生であったのです。ピアノと作曲を試験で競い合う仲でした。
しかしどちらもトップを取ったのはラフマニノフ。スクリャービンは負け。身長もスクリャービンは小男、ラフマニノフは背高のっぽ、手も大きい。その後の人生もラフマニノフはスランプに苦しみながらも数々の素晴らしい楽曲を残し、ロシアのみならずクラシック界を代表する大作曲家となりました。
が、スクリャービンはショパンに強い影響を受けてきた初期の楽曲から、ニーチェの人智学や神秘主義などの思想にはまっていき、作品も自ら開発した神秘和音を用いたものになり、「ポエム・オブ・エクスタシー(邦題;法悦の詩)」などのいろいろ実験的な…曲を書くようになったのです。
ラフマニノフはそんな彼をひたすら残念に思っていたようす><
その後スクリャービンは虫刺されが原因で43歳で死亡。ラフマニノフは葬列に参加をして棺をかついだと言われています。いい人…
こんなスクリャービンですが、作品はどれも素晴らしい。初期のショパン意識系から中期のアレちょっと…系と後期のいろいろヤバいのかも系、でも共通して独特な美しさがあるのです。なので熱狂的な信者が世界中にたくさんいるのです!
福間洸太朗さんもこの日のMCで「僕はスクリャービンが大好きです!」と高らかに仰っておられました。今日のプログラムもスクリャービンも知ってほしいという意味を込めてもの。3回あるスクリャービンのコンサートの中で、今日は中期の作品をセレクションしたと解説がありました。
まずはショパン意識系の前奏曲から6曲、そして中期のアレちょっと変わったかも系から詩曲2曲とピアノソナタ4番、ピアノソナタ5番でした。
この日は福間さんが付けたオリジナルの副題が添えられていました。僕の大好きなピアノソナタ第5番には「宇宙的交響曲」という素晴らしい副題!まさしく宇宙!神秘な曲なのです。わかるなあ〜
演奏は当然すばらしい。福間さんの公式YouTubeチャンネルにて、曲を弾きながら解説していたりする動画を見ていたので、生演奏でも見られてよかったです。やはり弾きながら宇宙を感じておられるのではないのかと感じました。
この世にあるけれども、いろいろな意味で遠い存在。しかし真実のひとつである宇宙!人間の心にも宇宙がある、スクリャービンもその中に生きていたのかもしれない…
なんて思うことができました。
この後のラフマニノフはみんな大好き知ってる前奏曲鐘と13の前奏曲集OP53でした。前奏曲集は長調と短調が交互に入れ替わる構成で、そう作ったのかはわからないけど通して聞くと、繋がっているようにも聴こえました。
この曲を作った2人の天才が同じ学校で競い合ったなんて。今年はスクリャービンの生誕150周年なんですよね。そんなに大昔でもないですよね。。20世紀には生きていたのです。なんだかその頃と今ではずいぶん世界も音楽も変わったような、気がするなあと。。
最近思うのです。自分は産まれてくるのは遅かったと。現世の全てが合わない。もっと早く産まれてきたかった。スマートフォンもインターネットなんてなくてもいい。サブスクリプション型音楽配信サービスなんてなくてもいい。愛しい文化が中心だった世界に産まれたかった、なんて切ないのだろう。光が丘のきれいなイルミネーション。まさに宇宙的です。逃れられないのであれば、生きるしか無いのです。この宇宙で!助けてアレクサンドル・スクリャービンさまあ!
終わり