久々にブログを更新して、以前のような、おもしろ系のド派手な記事を書きたいとも思ったのですが、ブランクには勝てず…。諦めました。
繰り返す諦め…。何にも負け続ける情けない人生。気がつけば何もなくなっていた。なぜそうなったのか、その理由も自分は理解できている。わかる。
ああ、暗い。私は暗い。どこかに同じような人はいませんか。そんな時はこの映画を見ます。
大好きなアメリカのポール・トーマス・アンダーソン監督の1999年の公開作品。初めて見た時は、震えが起きて席から立てなかった。9人の男女の「ある1日」を同じタイムラインで描いた3時間の大作。いわゆる群像劇。淡々とした9人の日常から、お互いにつながったりの波乱が、1日という一つの時間軸を元に9人の主人公が人生の岐路に行き着く。
その後プレイした「街〜運命の交差点」に似てる。あれも大好き。
そしてラ終盤の場面。
主人公達が突然、ある歌を歌いだす。Aimee Mannの「Wise Up」にあわせて。1フレーズづつくらいで交代して、溜息のようにシンプルな曲を歌いだす。悲しい、悲しい歌詞。とても悲しい歌詞。
Magnolia - Aimee Mann - Wise Up - YouTube
これがその映画の場面。
Aimee Mannはアメリカの女性シンガーソングライター。渇いているのに力強さを感じさせる声質、シニカルな歌詞が特徴。後に学んだ事ですが、ポール・トーマス・アンダーソン監督は、このAimee Mannの音楽の世界観を元に映画を作ったとのこと。彼女の音楽も凄いですが、音楽からこんな映画を作り出すのが凄い。脚本も彼の担当ですが、この作品だけで無く全ての作品で、言葉は文学的で、独特の感情の想起があります。彼の途方も無いインテリジェンス、想像力に敬服します。
せっかくなので、歌の場面の順番に合わせて9人を紹介しますね
9人のダメ人間まとめ(上記動画の登場順)
1.フィル・パルマ(フィリップ・シーモア・ホフマン)
後述の老人アール・パートリッジ(2)の介護士。この主人公の中で唯一のまともな人間。
死を前にしたアールの願いを叶えてあげようと奔走する。
フィリップ・シーモア・ホフマンはこの映画ではまともな人間だったが、2014年に亡くなってしまった。原因は薬物中毒。
2.アール・パートリッジ(ジェイソン・ロバーズ)
名物クイズ番組「子供は何を知ってるの?」の元プロデューサー。かなりの大物。しかし病に倒れ死が目の前にある。
過去に妻と子供を捨てた事を今でも悔いている。
3.クローディア・ウィルソン・ゲイター(メローラ・ウォルターズ)
後述のジミー・ゲイター(5)の娘。コカインが手放せず、乱れた生活をしている。
そんな時彼女はある男に出会う。
4.ジム・カーリング(ジョン・C・ライリー)
LAの警察官。真面目で敬虔なクリスチャン。独身で常に出会いを求めている。
通報先で訪れた先の女性に一目惚れをする。そんな彼は警察官として致命的なミスを犯す。
5.ジミー・ゲイター(フィリップ・ベイカー・ホール)
人気クイズ番組「子供は何を知ってるの?」の名物司会者。しかしガンに侵されて余命は短い。自分から離れていった娘(3.クローディア・ゲイター)と話したいと願っている。
6.ドニー・スミス(ウィリアム・H・メイシー)
「子供は何を知ってるの?」の初代優勝者。天才と言われるが雷に打たれてからダメになる。無能を理由に会社を首になるが、バーテンダーの男に恋をして「歯を直せば彼に愛される」と考え、ある計画を立てる。
7.リンダ・パートリッジ(ジュリアン・ムーア)
(2)アール・パートリッジの現在の妻。遺産目当てで結婚したが、アールの事を本気で愛してしまい、過去の自分の行いを激しく悔いている。決着を付けるため彼女はある場所に出かける。
8.フランク・T・J・マッキー (トム・クルーズ)
男性向けの自己啓発セミナーの主催者。過激な内容でマスコミの注目も浴びる。
彼には隠している悲しい過去があり、その過去を知っている男にある事実を告げられ、激しく動揺する。
9.スタンリー・スペクター(ジェレミー・ブラックマン)
クイズ番組「子供は何を知ってる?」の現在のチャンピオン。
一攫千金に目が眩んだ父親に戸惑いを隠せない。生放送の番組で子供らしいある失敗をしてしまい、そこから逃げ出した。
以上。
まるで自分という人間が分裂したかのような、それぞれの主人公のそれぞれのダメっぷり。
やはり己が可愛いのか、この主人公達にも感情移入してしまう。自分だけじゃないんだ、皆、どこかおかしくて、それが平常。でも致命的な事にもなる。
全てを諦め、現実を受け入れたかのような雰囲気の中、力無く歌われる「Wise Up」
この曲の歌詞は町山智浩さんがフィリップ・シーモア・ホフマン追悼で訳した歌詞が良いので、そちらを見てくださいね
ラストシーンは◯◯◯が降ってくるところでは無い!
よくこの映画は「Wise Up」のに起こる、あるイベントが意味不明だ!ラストシーンが意味不明だ!ということで酷評されたりするのですが、まずこのシーンは「ラストシーン」では無い!個人的解釈とかではなく、物理的な「ラスト」の「シーン」は別の場面で終わることを見逃してはならない。
最後の最後の場面、一瞬映るある人物の表示、それが全てを表している。
この映画がなぜ「マグノリア」なのか、ずっとわからなかったけど、マグノリアの花の画像を見てやっとわかった気がする。
中心から外へ開く。
映画の冒頭、タイトルクレジットでもAimme Manの「ONE」に合わせて花が開く様が表現されている。命の幹から他の花よりも弱々しく繋がり、しかし華麗に外へ広がる。中心の一つの軸は彼らを支配する「時間」のように感じる。
人間とは「マグノリア」の花そのもの。ラストシーンのあの表情を見たとき、冒頭のマグノリア花びらが広がった映像を思い出した。
というわけで終わりです!