僕の原点といえるアーティストや作曲家は沢山います。
それはちょっとおかしいと思われるかもしれません。通常「原点」は一つまたは限定的に複数とされ、それを元に自分やその現象を語るものかもしれませんが、本当に僕には何個も何個もその「原点」があり、そこの源からいつも何かが湧き出ています。それは自分の芸術的、または生活に欠けたものを補充するものとなっています。
なので、混乱しているのかもしれません。
今日はその原点の一つ、momusの3rd album「Tender Pervert」を紹介します。
あああ このジャケット素晴らしい。
大きいのを載せます。黒い空間で白い花に囲まれて、鬼の真似のようなポーズを取る男、怪しげな男、そして美しいだろうと思われる男、それがモーマス。本名ニック・カーリー。イギリス出身。
詳細はいつものごとくWikipediaをご覧ください。
日本ではカヒミ・カリィへの曲提供で知られています。
「I am a Kittien」を代表して何曲も提供してます。
momusによるセルフ・カヴァーもあります。
これが気持ち悪くて最高ですよモーマスが「僕は子猫 にゃーん」ですよ
「僕はネコ」ってもしかしてとか思うのですが、カヒミ・カリィのへの歌でしたね。
すみません><
また、Poison Girl friendという女性のソロユニットをプロデュースしてます。
このユニット名はmomusの2nd Album「Poison Boy Friend」モーマス2nd albumの作品名から取ったとのこと。モーマスがプロデュースしたアルバム「SHYNESS」素敵でしたよ。だってMomusプロデュースですから。想像していたより、もっとサイケで、少し辛口というか苦味がある大人の味です。カヒミ・カリィのプロデュースとはまたひと味違います。
Momus その名前はelというイギリスのレーベルのオムニバス・アルバム「LONDON PAVILION」で知りました。
この「LONDON PAVILION」は、いわゆる渋谷系、フリッパーズ・ギターが好きそうな、実際好きだった、っていうかなりたかった、「フリッパーズになれなかった僕ら」に大きな影響を与えました。
僕は後追いでしたので、下北沢の古本屋にあったサイズが小さい頃の「フールズメイト」が沢山あって、その中に「el」のことなどが書いてあったので買って、毎日のように読み漁りました。elだけでなく当時のアンダーグラウンドのロックの情報が満載でした。後のV系化がちょっと惜しいですね。カヒミ・カリィの所属していたレーベルのオーナー瀧見憲司さんなどが寄稿していて、すごく勉強になりました。
「el」が時代錯誤な古いヨーロッパの世界を、新しい世界にあえて発信しているということを知り、ヨーロッパ大好きで渋谷系も大好きな僕には「el」は嬉しい発見でした。
「LONDON PAVILION」にはmomusも参加していました。このレーベルからリリースされたアルバム「Circus Maximus」からの曲でしたが、このアルバムが僕はあまり好きではありませんでした。なので、この時点でmomusには目にいかず、LOUIS PHILIPPE(大好きです)THE KING OF LUXEMBOURG(めちゃ好き)の方が気に入りました。
しかし、洋楽のNEW WAVEを紹介した分厚い本に各アーティストの複数アルバムのレビューが載っていて、そこでこのアルバム「Tender Pervert」がレビューされていました。
そこでは「アコースティックとエレクトロがうまく融合されている、過度期の名作」とあり、評価が高いようでした。
僕は興味を持って早速御茶ノ水の「ジャニス」で購入しました。
収録曲を見てさっそく僕の中の何かが疼きました。
1 | The Angels Are Voyeurs | |
2 | Love On Ice | |
3 | I Was A Maoist Intellectual | |
4 | The Homosexual | |
5 | Bishonen | |
6 | Right Hand Heart | |
7 | A Complete History Of Sexual Jealousy (Parts 17 - 24) | |
8 | Ice King | |
9 | In The Sanatorium | |
10 | The Charm Of Innocence | |
11 | The Angels Are Voyeurs (Reprise) |
何かが何かというのはわかりません。何かです。
そして邦題を見るとさらにそれはエキサイトしました。
- 天使はのぞき趣味
- ラヴ・オン・アイス
- 毛沢東思想の知識人
- ホモセクシュアル
- BISHONEN
- ライト・ハンド・ハート
- 性的嫉妬の歴史(パート17~24)
- アイス・キング
- サナトリウムで
- チャーム・オブ・イノセンス
- 天使はのぞき趣味(リプライズ)
こ、これは。「いけない世界」です。いけない世界とは、調べてからわかったのですが「Tender Pervert」という言葉がまさにそれです。TenderもPervertも色んな意味のある言葉ですが、僕は「脆弱なる性的倒錯者」と解釈しました。
momosの音楽はまるで語りのように、起伏の少ないメロディで歌い上げることもあまりありません。だからなのか、僕の周りの人たちには全く人気がありませんでした。
しかし、僕はこのアルバムを聴いた時、全ての壁を超えた彼の声が僕の中にまで届いて、絶頂のようなものを感じました。そしてそれは既視感のあるもので、不思議な不思議な感覚です。MomusのプロデュースのアルバムをだしたPoision Girl Frriendの方が「初めてMomusを聴いたとき、やっと自分の音楽に出会えた」と思ったそうです。
僕も、同じことを思いました。「これぞ僕の音楽だ」「愛してるよMomus」アルバムは進んでいきますが、どれもこれも素敵な曲です。僕は英語をあまり理解できませんが、タイトルと彼の声で、その世界が見えます。僕は性的倒錯者なのでしょうか。とりあえず脆弱ですが。
それからmomusのCD、中古のアルバムを求める「Momusの旅」が始まりました。
渋谷のレコファン、下北沢のディスクユニオン、西新宿のヴィニール、なんせいっぱいレコード屋が当時ありました。なかなか追いつきません。
その旅の中で一番印象深いのが「Momusのビデオ」です。これは渋谷のZESTで発見しました。さすが渋谷系の真の聖地です。(一般的には渋谷のHMVだと言われてます)いいつも「小山田くんいないかな」とキョロキョロしてました。
そこで発見しました。当時インターネットはありましたが、そこまでネットで情報を探るということができませんでした。家はダイアルアップだったかもしれません。
なので、momusのビデオがあるということを知らなくて、凄く嬉しくて買いました。確か5000円くらいしました。さすがに痛かったです。今は某音楽系会社で働いている友だちと当時よく中古屋漁りに行っていたのですが、「モーマスのビデオを5000円で買った」と言ったら「信じられない!モーマスに5千円なんて」と言われてしまいました>< Momusは本当に人気ないです。
正直ビデオの内容は記憶にないです。ごめんね。Momus。
でもここまで書いたら、興味を持ってくれた人もいるかもしれない。
そういう方にこちらの映像を紹介します。
このアルバムにも入っている「In The Sanatorium」のPVです。
当時のものではなく。2014年のヨーロッパツアーのために作ったものだそうです。
どうりで初めてYoutubeで観ました。これは素晴らしいです。
美しい映像で謎めいた本当によくわからない倒錯世界、ヨーロッパの怪しい世界が広がって、自分の頭の中にあった映像が再現されたようです。「サナトリウム」という言葉、死に近い。行ってはいけない(結核の感染予防の施設です)ところ、そこにいる金髪の少年と黒い髪のベッドに寝ている女…
最後はやはり「死」なのか。
Momusと会いました
momusのことをもっと知りたくて、日本が好きみたいなのでライブやらないかなーと当時思っていたのですが、その機会はありませんでした。
しかし、「カヒミ・カリィ」の初ライブにmomusが出演するとのことでした。
「うおー」と僕は興奮して、友達を誘って、あまりカヒミ・カリィには興味なさそう、それより当時噂になっていた小山田圭吾の方に興味がありそうだったSくんを誘ってチケットをお互いに買いました。会場は旧赤坂ブリッツです。
しかし、僕は当時忙しい会社でアルバイトをしていましたが、会社は赤坂ブリッツのすぐそこ(どこかわかりますよねーこのブログ読者なら)だったので、ライブ当日は平日ですが、「なんとかいける」と思いました。しかしそのSくんから「モーマスいるよ」という携帯からのメールが来るも、仕事が終わらず会場についた時はもう終了していました。「残念だったねー」とSくんに慰められ、「とりあえず移動しますか」と地下鉄を降りた時です。
金髪の短髪の長身の痩せた男と、ロリータ系の格好をした日本人女性の2人組が通りました。あきらかに異質な感じです。「モーマスだ」僕は駆け寄りました。
「Are you momus?」と話しかけました。ライブ終了直後に申し訳ないと思いました。周りには気づいた人が少し集まってきたような気がします。僕は彼に話しかけました「私はあなたの音楽が好きです」「oh thank you」とすこしニヤっとしました。僕は「もっと話したい」と思い「私はあなたのヴィデオを買いました」というと「oh?VIDEO?」みたいな感じでビックリしてました。
握手とかもしませんでしたが、憧れのモーマスに会えたこと。本当にうれしかったです。
その後、この界隈と自分は離れても、モーマスがまだ活動していて日本に住んでいるということも知っていました。でも彼はどこかに定着するタイプではないようです。
謎の男、モーマス。出会いから20年弱ですが、まだまだわからないことだらけです。
そして素敵な音楽。僕のための音楽。
momus,Thank you my only lovely music!