本当はブログなんて書いている場合じゃない。
自分を取り巻く環境は日に日に悪くなってきている。
暗闇は何層も重なって、迷路を創り出した。恐怖のあまり叫んでも、声はかき消されて、僕は一人で呆然としていた。
でも、このタイミングでdeadmanの事を書こうと思ったのはこのツイートを見たから。
叫び
— 眞呼 (@maco_nightlight) 2016年5月22日
悲鳴の渦
言葉にならない
うたをうたい
それでも
人に憧れる
屍 pic.twitter.com/NxFhUEUft6
deadmanのボーカリスト、眞呼さまのTweet。最近は熊本地震の募金を呼びかけたりと活動されている様子だけど、普段の日常を投稿したりはしない。
この日の投稿の日付、5月23日はdeadmanのラストライブの日だと、後で気づいた。それを知った途端、大好きなのに全く書いていなかった、deadmanの事をブログに書こうと思った。
deadmanとの出会い
deadmanは2003年頃、とにかく評判がよかった。至る所でその名前が出ることがあった。「deadmanいいよね」「deadmanマジきてる」とかそういう会話が界隈ではよく出てきた。
僕はこの頃、働いてはいたけど、貧しくて絶望の日々だった。ヴィジュアル系もあんまり聴かなくなっていた。でも自分のモヤモヤを解決してくれる音楽を探していた。
「なんだかdeadmanって面白そうだナ」なんて思っていたら、新しいアルバムが出て、14曲入りで2000円という破格の値段だった。よし買おうと決めて・・・
2003年4月、気づくと僕は渋谷ON AIR WESTにいた。
要するに、すごく好きになったのだ。久々に意を決して、一人でヴィジュアル系のライブに訪れた。もう何年ぶりだろう。この時僕はまだ20代だった。まだ若い。でも男一人でヴィジュアル系のライブに行くというのは、やはり勇気がいる。でも行こうと思った。
当日、僕はたくさんのバンギャ様と、会場の予想外の会場の静寂に戸惑っていた。
静寂はどの程度かというと、ライブハウスの空調の音が聴こえるくらいだった。ヴィジュアル系のライブではありえない。
「なんか違う」「いろいろ今までと様子が違うぞ」と僕は感動していた。
そして、「ギターのaieがズラ」だという噂の真偽を確かめるために、凝視して見ていたが、よくわからなかった。当日はcali≠gariの青さん風のおかっぱズラだったかな?
ライブは完成度が高く、最後まで飽きなかった。配布CDの「Family」も気にいった。
no alternative (2003年3月8日)
ライブで気づいたけど、このバンドのサウンドは本当に独特だ。サウンドとして一番特徴的なのは、aieのギターだと思う。
常に直線的で、硬質でジャリジャリしてる。しかしその線は何かを自由に描く。
このアルバムでは、ギターのオーバーダビングは控えつつも、基本的に「ギター一本」でサウンドが構築されている。その傾向はこの音源以降かなり顕著になった。
これが「ノー・オルタナティブ」なのかなと邪推してみる。
そういったサウンドながらも曲調は多岐に渡る。シンプルなサウンドだから、ソフトな「銀のパラソル」「ドリスからの手紙」のような曲でもそれが活かされている。
あと「in media」これは名曲。歌詞の中の彼は冷静を装いつつ、崩壊寸前のよう。盛り上がるメロディとともに明かされる狂気。うーん名曲!
アルバムは更に起伏をつけて、ひっそりと終わる。
701125(2004年4月6日)
いくつかのシングルをリリース後、約1年ぶりにリリースされたミニ・アルバム。
といっても、オリジナル曲は少なく、過去の曲のリメイクが中心。1年後に2曲追加したものが発売された。
実はこの前に発売された「雨降りの向日葵」を聴いて、眞呼さまの声の変質に気づいていた。なんでも「no altanative」のツアーで喉を壊した、みたいな噂を聞いた。それと声の変化が結びついているかはわからない。
曲は昔の原型を留めつつも、「新しい試み」がされていた。カバーされたのはどれも名曲ばかり。ファンとしては、セルフカバーは正直微妙というのはある。いつも、いつでも。そして眞呼さまの変わった声が、よけいに悲しく、響く。
℃(ディグリーズ・センティグレード) 2004年10月6日
そんなこんなで、自分の中では不安要素の一杯の中、リリースされた4曲入りミニアルバム。これが最高だった。眞呼さまの声は変調は続いているものの、これが新しい味になっている気もした。aieの曲はポップさを増している。
「degreeds centigrade」はアップテンポだけど明るいとも、暗いともいえない曲。aieの引っ掛けのような気がする。「monster tree」は怪しい人形劇のサントラのような曲。「maze room」はすごい!完全に迷宮に入りこんだ感じのある。コード進行。これに併せてうたう眞呼さまはさすが。こんな曲は他のバンドでは聴いたことがない。
「体温」は新宿リキッドルームで聴いて、ただただ歌詞がしみた。今までになかった、身近な情緒。それは次の、そして最後のアルバムにつながっていた。
in the direction of sunrise and night light 2005年12月14日
in the direction of sunrise and night light(2nd press)
- アーティスト: deadman,眞呼
- 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
- 発売日: 2009/11/30
- メディア: CD
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いよいよ来てしまった最後のアルバム。
このアルバムを聴いた時はまだ活動停止の報は届いていなかった。
一聴するに、このバンドが脂にのって、すべてが上手く廻っているように聞こえた。
冒頭の謎のノリ一発「star baby」で、テンションが上がる。「raison d'etre」なんてkeinみたいwで超カッコいい。眞呼様の声も完全復調のように思えた。
ひたすら悲しい「additional cause for sorrow」から続く「follow the night light」は、僕のdeadmanのベストソングになった。deadman初(だったよね)のPVも忘れられない。
初めて聴いた時から、心掴まれてしまった。現実の厳しさを受け入れつつ、幻想世界に逃げることはなく、すべてを醒めた目で見つめる。この時の眞呼さまにしか歌えない歌だと思った。
この曲が出た2005年頃、僕はなんとか今までよりも、まともな会社?に入ることができて、実は希望の日々だった。もちろん先はどうなるかわからない。だから不安だった。
deadmanのすこし「抜けた」サウンドと歌詞は僕のこころにはぴったりだった。
End Roll 2006年5月23日
その日は来てしまった。
deadman 活動休止。
その報を聞いた時はやはり悲しかった。「deadman死んじゃうんだ」と冗談じゃないけど思った。この日のライブには絶対行こう。すぐにチケットも買った。
でも直前になって、行けるかどうかわからなくなった。ライブその日は、僕が頑張って準備をしていた、サービスのリリース前日だった。確実に朝までコース。どうしよう。
実はその時、会社は渋谷にあって、会場の渋谷O-EASTもすぐだった。開演時間がすぎる。大丈夫。まだ間に合う。なんとかかんとか荷物もデスクにそのままにしてO-EASTに向かった。
着くともう何曲かやった後だったぽい。会場はソールドアウトして、もちろんギュウギュウ詰め。かなり後ろの方で視る。眞呼様は背がお高いのか、後ろからもよく見えた。
ラストということもあり、客席もこの日はブースト気味だったように思う。
僕の前に立っている一人の男性が「This Day. This Rain.」で感極まったように両手を空に向けてあげて、なにかを呟いていた。僕は疲労で何か現実で無いものを見たかのように感じてしまった。
deadmanが活動していて僕がよく聴いてた2003年から2006年は僕の人生にとって、激動の日々だった。貧困のアルバイト生活から、這い上がりなんとか30代のスタートを良い形で迎えることができた。
それから、時が経ちまた今回対峙することで、もう少し自分の事も見えるかなと思った。久々に聴いたdeadmanの曲は、やはり自分に取って大事な音楽だった。
眞呼さんのTweet「人に憧れる屍」まるで今の自分の事だと思う。
僕はまだ死んでいる。
こんなブログを読んでくれて、本当にありがとう。