さわやかトラウマ日記

さわやかな音楽ブログです from 2004


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藤圭子「圭子の夢は夜ひらく」の歌唱動画を見て、本物の歌手というものを知りました

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素晴らしい動画を見つけました。藤圭子さんが昭和54年に歌唱をした自信の代表曲「圭子の夢は夜ひらく」の動画です。この曲は園まりの「夢は夜ひらく」のカバーですが、短いフレーズを繰り返すだけ、というシンプル極まりない構成の中でも、巧みな歌唱力によって、物語を感じさせるようなものになっています。

有名な歌詞「15 16 17と私の人生暗かった 過去はどんなに暗くても 夢は夜ひらく」という歌詞に音符をあてはめると

「ララシドドドシラ シシシシシ レレレレレシレ ミミミミミ ファファソラーソファラ ミレドレミ シシドミレドシラ〜」というこのメロディだけで、構成されています。それが計6回、間奏を挟んで繰り返されるだけ、です。これ以外のメロディが無いのです。大きな展開もなく、計3分で曲は終わります。

藤圭子は、この限られたフレーズの中で、譜面通りに歌いつつも、それぞれのフレーズ毎に微妙な違いをつけています。ほんの少し間を開けたり、早く進めたり、様々な変化をつけて、この曲の世界を表現しています。

何回か聴いていると、歌詞にあわせて変化もつけているな、と気づきました。

赤く咲くのは けしの花
白く咲くのは 百合の花
どう咲きゃいいのさ この私
夢は夜ひらく

 最初は、これから語られる何かに対してを表しているように感じました。大きく捉えているなと。

十五 十六 十七と
私の人生 暗かった
過去はどんなに 暗くとも
夢は夜ひらく

 おそらく、この年代はもう遠いこと。過去は暗かった。その日々を苦々しく思いつつも、今につながっているのかなと感じました。

昨日マー坊 今日トミー
明日はジョージか ケン坊か
恋ははかなく 過ぎて行き
夢は夜ひらく

 ここは「こんな話おかしいけどさあ」みたいな、ちょっと自分を卑下しているような、笑い話に近いかのような語りかけがあると感じました。「恋ははかなく 過ぎて行き」のところは、一瞬でも愛した男達の顔を懐かしんでいるような、歌だけではなく実際の藤圭子の顔の表情にもあります。

 

夜咲くネオンは 嘘の花
夜飛ぶ蝶々も 嘘の花
嘘を肴(さかな)に 酒をくみゃ
夢は夜ひらく

やはり短い、歌のワンフレーズを繰り返した間奏から、続く部分は、場面が変わったのかなと。「夜咲くネオンは嘘の花」次の「夜飛ぶ蝶々も」は切羽詰まったかのように入ってきます。相手が何かを感じる前に、それを聴いてほしいかのような。この後に、言いたいことがあるか、何も無いことを表現しているのかな、と。

前を見るよな 柄じゃない
うしろ向くよな 柄じゃない
よそ見してたら 泣きを見た
夢は夜ひらく

 「前」と「後ろ」と対象的な言葉に対して双方に「柄じゃない」と締められている、後の「後ろ」が強調されているのは、どちらも「よそ見してたら 泣きを見た」を強調したかったのかなと、感じました。

一から十まで 馬鹿でした
馬鹿にゃ未練は ないけれど
忘れられない 奴ばかり
夢は夜ひらく
夢は夜ひらく

 最後は、ここまでの女の表情の全てが歌に込められていると感じました。自戒をして、強がるけれども「忘れられない 奴ばかり」のところが一番強調されている。でも「夢は夜ひらく」が2回繰り返されます。女が何を訴えているのか、などは考えません。これはある女の独白の曲です。大したことがない風景です。でも、そのようなところから、人間の本質が垣間見えることもあるのだと思います。

短い時間、同じフレーズの繰り返しでも、これだけの表情が付けられるなんてすごい、本物の歌手とはこういうものなんだなと、知りました。

 

そして、少し調べて、藤圭子はすごい歌手だったんだと気付かされました。デビュー・アルバムが空前の記録的な大ヒット、売上連続1位の記録を更新して、次の1位は、藤圭子のセカンド・アルバムだった、などの逸話があったと知りました。

娘が似たような道を歩んだんだな、と。やはり思いました。わかるかと思いますが、娘は宇多田ヒカルです。宇多田ヒカルが「遺書がある」と言っていたということも知りました。

今、このような高度な歌唱がテレビでは聞けなくなってしまいました。あるとしたら、民放のゴールデンの枠では無いでしょう。歌を本芸にしている歌手の人たち、ミュージカルやクラシックの歌手だったらありえるかもしれない。そもそも歌謡曲というものが現世から無くなってしまいました。大衆に支持される曲というものが無くなった。

それは時代の流れというには、あまりにも惜しすぎると思います。が、現状はやはり「夢は夜ひらく」ということなのかもしれません。

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おわり