こちらを鑑賞致しましたので鑑賞記を残します。
この地において、安価なチケット価格で、一流の音楽家を招聘してリサイタルを開く、というシリーズの一貫のもので、若手ピアニスト、現在28歳!ピアニストとして、名前が知り渡っている中ではかなり若手の方です。
その経歴はなんとなくは知っていました。ハンガリー人のお母様、日本人のお父様ということ。「私は見てはわからないかもしれませんが、ハーフです」という本人の饒舌なマイクを使ったMCもあり、場馴れした感じは、やはり若手とは思えない貫禄がありました。
そして、曲の説明なども間、間にはさんで、連続して曲を演奏する際には「私が腰を上げてから拍手をお願い致します」とのこともあり、初心者には理解が難しい「正しい拍手のタイミング」をわかるように伝達してくれました。
しかし、会場に「私が上田に来た時の演奏を聴いたことがある人は挙手をいただけますか」という問いに約70%くらいの方(金子さま本人の判断です)が挙手していた。みなさん初心者ではなさそうです。
そして「今年は上田に5回くらい来ている。トータルだと何回か…もうわかりません」とのことでした。もう正直上田に飽き飽きしているのでは、と思ってしまったことを反省していますー!
その他、今回の上田への来訪は別の目的があり、それは「こどものためのピアノコンクール」がこの会場にて行われそこで審査員を務めるということでした。
そのコンクールには「バルトーク」の曲が課題曲になっている、ということも教えてくれました。そして冒頭はバルトークの子供向けの練習曲集「ミクロコスモス」からの曲でした。金子さんが幼い頃に学んだ曲達とのことです。
子供のピアノ教育に対しても一言がありました。「技術だけではなく、表現でも評価するようなコンクールがなく、機械的な演奏だけが評価される風潮がある。それを変えたい」とのことでした!
その言葉は短期大学音楽学科ピアノ専攻だったわたくしにも、深く響きました。
その学内にも、いつも高得点を取る女性がいて、曲はやはり難しいリストとかそんなのばかり。そして「練習の虫」でした。誰よりも練習をしていました。なので、いつも高成績。しかし、学内においては女生徒たちから「機械」「マシーン」「シーケンサー」と陰口を叩いていたり…「シーケンサー」名付けたのは僕でした><ごめんなさい!
一流のピアノコンクールでもそのような傾向があるのかないのかは、出たことも見たこともないので、わかりません。しかし、やはり「審査する側も難しい」と仰っていたのは、理解できます。
そして演奏についてですが、僕がベートーヴェンのソナタで一番好きな「ピアノソナタ 第21番 ハ長調”ワルトシュタイン”」を第1部の最後に演奏してくれました!
ここでも初心者の方へ説明があり、「この曲は他に比べて長い。全3楽章あって、1楽章はとても長いですが、2楽章はとても短いです。3楽章は…とても長いです!」とのことで会場から上品な笑いが起きていました!たしかにこの曲長いです!
しかし、この曲自体がほんとうに素晴らしい曲なので、僕は長さを感じませんでした。特に好きなのが、とても長い同士の第1楽章と第3楽章なので、まったく問題ありません!
この曲が、「現代のピアノに近いかたちが出来たことの喜びに溢れた曲」だという説明もありました。だからこそのハ長調だったのかな、と考えたりもしました。
そして第2部、ショパンのプレリュードから「雨だれ」ラフマニノフの「前奏曲」
「前奏曲」というものに対しての説明もありました。わかりやすかったです。
そしてドビュッシーのベルガマスク組曲より「月の光」を挟んで、ラストはリストの「ラ・カンパネラ」でした。
この曲の説明は、他の曲比べて短かったです。「いつも演っていますが…演らないわけにはいかないでしょう」と笑顔で話していました。
演奏は、もちろん素晴らしかった。当然です。金子三勇士さんは小学生から「バルトーク音楽小学校」もちろんハンガリーの学校に通い、そして飛び級で11歳で「国立リスト音楽院大学」に通った経歴の人です。つまり、バルトークとリストの正統な系統を受けているのです!すごいです!そんな人が日本人でもあるだなんて…!
しかし「ラ・カンパネラ」は日本において、日本おいてだけは、特別に有名な曲になってしまいました。老齢の悲劇のご婦人が弾くことによって「感動する曲だ」という触れ込みにおいて、有名になった。
そもそもフランツ・リストはそのようなピアニストではなかったこと。クラシックファンならよく知っていることです。
ガンガンガンガン超絶技巧をひけらかして、キャーキャー言われていた!そのような溌剌で刺激的な存在であり、そしてショパンとも名を張るメロディ・メーカーであったのも事実です!
僕は、「やさしいラ・カンパネラ」なんて認めません。金子さんのような方、若くて力が余りまくっている、在りし日のフランツ・リストのような人が演奏してこそ、本物の「ラ・カンパネラ」だと感じたのです。
この日の演奏も、彼のそのような気迫を感じることができました。僕が感じただけでご本人がどう思っているかはわかりません。しかし、自分が感じたことは事実です。「がんばっていますよ」なんて言わなくても、言葉がなくても伝わることもある…
@miyujik ピアニストの夢を長野に引っ越すことであきらめてしまったおじさんです!リサイタル素敵でした!ワルトシュタインは本当に素晴らしい魂のこもった演奏でした!リスト3曲も金子さんの様な生気溢れる方が弾くのが一番だ!と気づきました!ハンガリー万歳!
— 善良maemuki (@sawayakamaemuki) 2017年7月2日
こんな感じでご本人のTwitterにリプライしてしまいました!恥ずかしいです。
でも、本当ですよ。
「金子さんの様な生気溢れる方が弾くのが一番だ!と気づきました!」というのは、某富士さんへの皮肉ですよ!!!!!ごめんなさい><
アンコールはなんとリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」
「こういう長い曲…9分半くらいですが…」と恐縮されていましたが、これがやはりぜんぜんよかったのです!さすがリスト音楽院!と思いましたが…
そういう見方はもしかしたら重荷なのかもしれません。あくまで邪推です。でも、「なんだこのやろう」みたいな気概、気合も感じられた演奏でした!
「わかりやすくて聴きやすい曲なのに演奏はめちゃくちゃ難しい」というリストらしい曲ですが、見事に弾きこなしていて、圧巻でした!
以上です!
今度はなんとこれまた一流ピアニスト「小川典子」さんが招聘されるようです!
曲目には小川典子さんの十八番!武満徹の曲がありました…上田で武満徹を理解できる人が…いると思います!そう信じたい!