昨年、僕はバンド時代の友人たちと東京で久しぶりに再会をしました。その時はやはり当時、20年くらい前の出来事をよく話しました。あんなライブやったね。みんな何やってるんだろうね。みんな見なくなったね。仕方ないね。
そんな中で、一人だけ、その時の人たちの中で違う評価だったがいました。それはかつて極めて近しいところにいた人です。
それは、Plus Tech Squeeze Box(プラスティック・スクイーズ・ボックス)の主催者、ハヤシベトモノリ、渋谷系てき呼称だとハヤシベくん!です。
「ハヤシベくんは凄いね」と言い出したのは、僕がやっていたバンドの人、Plus Tech Squeeze Boxのセカンド・アルバムにゲストで参加した人です。そういえば、彼女のバンドのスタジオ・ライブにハヤシベくんが来てくれて、僕も会ったということを話しました。忘れてはいませんでした。
ハヤシベくんって天才だよね
「ハヤシベくんって天才だよね」と僕はいってみました。「そうだね。そうそう」とその人は同意をしてくれました。そして思いきって「中田ヤスタカより、凄いよね」と言うと「そうだねうんうん」との同意を得ました。
上にあげた「early RISER」を収録したアルバム「FAKEVOX」がリリースされたのは、2000年です。
- アーティスト: Plus-Tech Squeeze Box
- 出版社/メーカー: 株式会社ヴィヴィド・サウンド・コーポレーション
- 発売日: 2001/02/20
- メディア: CD
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僕らは彼らと同じレーベル「VROOM」からアルバムをリリースしていました。「プラステックが凄い」という情報はそこから入ってきました。レーベルの島田さんも一推しをしていました。そして音源もすぐ聴くことができました。
自分は、自分と同じフィールドにいる人たちの音楽があまり好きではありませんでした。対バンをするバンド 殆どに興味を抱くことはなかった。
しかしこの「early RISER」を聴いた時に僕は衝撃を受けました。時は2000年。アマチュアにおける宅録の範疇でこのような音楽が出来ている人は、まだ殆どいない状況だっと思います。そして僕らのバンドも自宅録音でした。ハードディスクを利用したカットアップ、など想像もつかない頃に。まだカセットテープにてメンバーで音源のやりとりをしていたような頃です。自分より先にここまで進んでいる人がいるなんて、と当時は思いました。そして、今でも当時の音源に対してそう思っています!
「渋谷系」の後継となったクリエイティブなサウンド
ハヤシベくんの音楽に共通するもの、それは「渋谷系のようなもの」であることと「彼が作った音楽だとすぐわかる」ことです。「渋谷系」というものはソフィスティケートされたものを提示することが最もであり、なおかつエンターテイメントでもなければならない、というように自分は感じていました。それに則すと、とってもつまんねーものになります。そうです。つまんないのです渋谷系の真似事をしている人たちは!
それは、彼らの殆どが「ギター」に頼っているから、と僕は思っています。ギターだけに頼り続ける限りは、所詮真似事にしかならない、仕方ないとは思います。それしかできることがないからです。ハヤシベトモノリの音楽は、デスクトップミュージックが主です。彼はギターは弾けないので、他の人にまかせている。ギターだけに頼った音楽などではないのです!「その他大勢」とは違うもの、なので、彼の音楽は「渋谷系」と呼んでも良いと思います。そういう最新のものが、本来は「渋谷系」であり、様式美のみで構築されるものは、渋谷系ではないからです!!
そしてハヤシベトモノリの音楽はひたすらに自由です。統制されてるもの、それはBPMです。当たり前なのかもしれませんが、ポピュラーミュージックにおける重要なもの、それは「BPM」または「BPM感」を終始統一するということだと、僕は思います。
しかし、サンプリングなどを使う場合には、それが難しくなる。修正作業がクオリティを下げてしまうということもあるのだと考えます。しかし彼はそのようなことすらも、曲のクオリティを上げるために利用できた、そこが他との大きな違いです。デコラティブでサウンドはひたすらにドリーミーであり、現実感に乏しい。そこが、彼の強みだと思うのです。ひだまりの世界でほんわか♪ののようなヌルいギターポップとは違うのです!未来と愛、そしてまだ観ぬ世界が、つねに作品の隣りにある、と全ての作品において、リミックスにおいて、感じられます。
その後、何をやっているんだろう
その後、ハヤシベくんは何をやっているんだろう。ずっと気になっていました。最後にあった友達のスタジオ・ライブは、小田急線の桜ヶ丘駅そばにあるスタジオでした。その頃僕は某現ゲーム会社を哀しみの自己都合退職をした後でした。ので、2010年頃です。その時はゲーム関係の仕事をしている、とお伺いした気がします。僕は「音楽はもうやっていません」と答えたことは覚えています。
その後、彼について調べてみました。なんとなく「Plus Tech Squeeze Box」で、そして「ハヤシベトモノリ」でTwitterで検索してみたのです。そうすると、今でも彼を支持する声がある、ということに衝撃を受けました。
数々のリミックスなどで名を上げている。声優の竹達彩奈の音源にも参加をした、などいろいろありました。しかしハヤシベトモノリ氏の名による音源のリリースは無いようです。
当時も評価されていた
しかし、彼が当時から評価されていたこともわかりました。当時でも十分に評価されていたコトは知ってたつもりでした。が、それ以上に異常でした。
[STUBBIE RECORDS] Plus-Tech Squeeze Box / FAKEVOX
こちらのページにはVROOMレーベルによるおそらく「FAKEVOX」リリース時の宣伝で、ギョウカイ人からCDの感想を集めたものがあります。そのメンツが「渋谷系第1世代」要するに「フリッパーズ・ギターちょっけい」の人たちが総じてPlus Tech Squeeze Box を絶賛しています。そのメンツは元はプログレッシブロックの雑誌から渋谷系、現在はアイドル雑誌のようになっているMARQUEEの編集長、編集部の方たちから、なつかしのindies magazine、タワーレコードの「BOUNCE」、ファンタスティック・プラスチック・マシーンの田中知之氏、そしてそして「米国音楽」の川崎大助!!からも寄せられています。川崎氏はこんな事をここで書いています
『渋谷発のいろんなものの直接的影響が多々見える(ような気がする)ところ。ハードディスク・エディットによるカット・アップが、けたたましいまでのスピード感を生むところ。非常に今日的なバンドのありかただという気がします。』
僕は「米国音楽」に一時期、おそらくハヤシベトモノリくんと同じ時期ぐらいによく読んでいました。だからわかるのですが、彼の口から「渋谷」という言葉を音楽に絡めてでることは、凄いと思うのです。彼は「渋谷系」というムーブメントを一切認めていませんでした。そして大抵の新しい音楽は否定的なところから入っていった。だから、気にいったものは贔屓をしていた。それは良いことだと僕は思うのです。そんなへそ曲がりがこの文章を書いた、要するに絶賛をしているんだ…かわさきさん!と僕は感じました。
ハヤシベくんが2005年に全曲インタビューに応えた記事があった
2005年にライター大塚幸代さん(2015年に逝去されたようです)が作成をした熱いページにて、全曲インタビューそしてPSBの成り立ちから2005年以降の見通しまで、話していました。これを読んで僕とハヤシベくんと共通点がいくつもある、ということがわかりました。まずは大きなもの「フリッパーズ・ギター」はもちろん、彼らがトラットリアのファンだということも知っていました。しかしそれは「ライブの打ち上げ」での「噂話」でした。それは変な猥雑な視点ではなく「プラステックはすごい」という前提での話です。彼らがいないところでもそのような話がでている人たちでした。
また、そのような事をおおっぴらに話す人もあまり当時はいなかったかもしれません。今はあたりまえのように話されているような気もします。断定しないのは、もうこのシーンから離れて長いから、わかんないのです!
そして、彼がデスメタルも一時期聴いていたということ。これも僕と同じです。あまりデスメタルまで聴くような「変わった人」実はいたりしたのですが、まあ「ギターポップバンド女子」にはほとんどいません><
そしてそして「おニャン子クラブトリビュート」にゆうゆの「天使のボディーガード」のリミックスで参加をしていただなんて!!
しかもかなりのおニャン子通!ゆうゆの「天使のボディーガード」の素晴らしさ、後藤次利の名前も挙げて絶賛している。ゆうゆ(本名岩井由紀子!)のコンサートにも行き「天使のボディーガード」の歌い出し「まもってー」を観て感動したなどのけっこう素晴らしい逸話も話されています👼
そしてたくさんある、でも「使い回しが多い」ということも素直に認めていること、僕は良いと思います。「ヴィジュアル系で音源使い回しは常識」とか教えてあげたいのです。そんなこと知らないと思いますので!!そんな事しか、僕が知っていることはなさそうです。。
でも、僕はハヤシベくんとそんなに話したことはなかったのです。僕は当時、ひとしみりクソやろうでした。もっとこんなことを話したかった…でもまだ彼は生きてる!
いつか、またお会いして、話をしたい、そして…ひとつ聞いてみたいのです。彼は僕がひっそりと売っていた僕がソロで出したデモテープを持って聞いてくれた、という話をしたような記憶と空があります。。ほんとうなのでしょうか?それを売ったのは「LOVE KNOTS PARTY at 新宿JAM」という自分のバンドの主催イベントだったような><もうかなり前のことです。。本当かな??妄想だったら恥ずかしい…
※このインタビューの中でハヤシベトモノリが「この曲を聴いてほしい!」と力説していましたので、貼っておきます!やはりカッコイイです!カオスにオシャレ!カオスなオシャレ!渋谷はカオス!今日もカオスなんだろうなくっそ!って感じです!
僕らは渋谷系「第3世代」でも「渋谷系は終わった」
そしてこんな供述もありました。
——……あ、そうだ。あのー最近、若手のバンドが渋谷系第四世代って呼ばれてますけど、なにが1でなにが2でなにが3?——へー。4年づつででくっきり区切れるらしい。バカバカしい(笑)。——でもいいんですか、渋谷系を語って。いいですよ、語れますよ。——さすが余裕の発言ですね。え、でもアレって終わったことでしょう?——終わったんですね。うん、俺の中で(笑)。
時間が経った今でも、同じ状況なのかもしれません。渋谷系は終わった。そうです。とっくのとんまに終わっていた。いつまでも引きずっている人が目立つのは、小沢健二が日本での活動を復帰したということも大きいかもしれません。それは「渋谷系を好む人」たちに対する軋轢が増える要因にもなっている、と思います。
なぜか、それは後進が育たなかったから。と僕は思っていましたが、ハヤシベトモノリはまだ活動中です。第2世代の人たちは、軒並み沈没しているというのに!なので彼には「第3世代」の代表として、活躍してほしい。もっともっと。でも、そういう「昔ならの頑張り押付け」は渋谷系ではないということもあるのですが、もう渋谷系云々は、よいのです!とにかく好きなようにやってほしいし、そのような環境があればいいのになあと思いました!
そしてこんな情報もTwitterで得ることができました。
パラリンピックムービー音楽担当しました。アスリートの凄さが伝わる。
作曲:ハヤシベトモノリくん,ラップ:JUNくん,mix:永見竜生さん。https://t.co/UTtg2NK3SV
— サメシマミツル (@sameshima_m) 2017年12月1日
ソースがこれ以外ない、のですが。おそらく本当だと思います。しかしこのかっこいい曲は完全にヒップホップです。想像がつかないのですが、おそらくこんなことは余裕でしょう。彼は天才です。天才とは、他の人ができないことができる人です。そんな事ができる人は、少なくとも「渋谷系第3世代」にはいなかった。僕もそうだった。でも僕はあえて、対抗したいと考えています!しかし僕はこのタイミングで会社員復帰します><
しかしハヤシベくんのような天才は、僕のようになってほしくない。好きな音楽だけをやって暮らせるようになってほしいのです。そしてもっと自由にやってほしいな、なんて勝手に考えています。
おわります!