さわやかトラウマ日記

さわやかな音楽ブログです from 2004


さわやかでまえむきな人間になりたい男が
好きな「文化」を語る。
そんなブログです。from 2004yaer。

ファンレター&苦情はこちら pinkcoatpiter@gmail.com



  キリンジ「3」

キリンジは聴かず嫌い‥「嫌い」でも無かったのだが、聴かず無関心。聴かず知らないふり。

上手い言葉が無いのだが、なんとなーく聞かなかった。なぜなのか。よくわからない。特に理由はない。しかしその形容できない時間は無駄だったとしか思えない。特にこのキリンジにとって3枚目のアルバム「3」を聴いた時は強くそれを実感した。この「3」を手にとった時は「ああ、きっとこれは名盤だ」となんとなく予感をしていた。私はキリンジが堀込さんという兄弟で、ポップフリークで、結構人気があって、評価も高くて、事務所がナチュラファウンデーション。ぐらいしか本当に知識がなかったので、この「3」が本当に名盤だという事とか全く知らなかった。でもわかった。

この↑ジャケット。こんなジャケットで名盤でない筈がない。堀込兄弟のある意味異常とも言える凡庸すぎるルックス。顔立ち。ここまで凡庸な一般人的なルックスのミュージシャンは他にはいない。ここまで凡庸だと神がかり的でヴィジュアル系も真っ青。私はキリンジヴィジュアル系だと思う。堀込兄弟の脅威の凡庸なルックスによって奏でられる、凡庸過ぎないが日常からは脱しない、あくまで等身大の脳みそによる等身大でない異常世界。それは今まで誰もが語ろうとしなかった、できなかった新しい「生活の中の脳内世界の様様な描写」である。凡庸なルックスによって奏でられる凡庸で凡庸でない世界。複雑だ。こんななりでキリンジは超複雑なのだ。

あージャケット。この顔立ちにてこのアブラギッシュなテカり。私たちは堀込兄弟にナメられている。それは確実だ。キリンジの音楽は聴きやすい。とても聴きやすい。冨田恵一先生によるコーディネイトが良いのだろうか。だけどこのジャケットはそんな聴きやすさを挑発するような孤高の道を歩んでいる。二人はまるで歴史の証人の要に荒くれの中、油を纏いて佇んでいる。そう神。キリンジ神による3番目の黙示録とでも言いたいのだろうか。だけどキリンジの音楽は聴きやすい。ポップでオシャレでナウな感覚だ。ジャケットにおいても実は複雑なのだ。キリンジは超複雑だ。

1曲目は「グッデイ グッバイ」

シングルにもなった曲らしい。1曲目にふさわしいアップテンポでウキウキするようなホーンが冴えるポップチューン。しかし歌詞は絶望のどん底である。人通りの多いゴミゴミした街頭にて歌の主人公は力なく佇む、冷めた「街頭で頑張る人たち」の描写に続いてサビでは「誰か話を聴いてくれ唄う号外さ」自己が薄く見えてしまう街頭にて主人公は心の中において、他人との繋がりを強烈に求めている。良い日、さよならというタイトルにもとれる強烈な孤独を表現した明るい名曲である。

2曲目のイカロスの末裔」はディスコなダンスナンバーに意図不明な描写の歌詞が絡む浮遊感溢れるナンバーだ。入り組んだサビのコードプロぐレッションはまるでジェットコースターだ。ジェットコースターに乗る堀込兄さんを想像してしまった。なかなかよかった。堀込兄弟ってどこにでも合うルックスだ。素晴らしい。「遠くまで飛べるかな」という所の翳りのあるコード進行が好き。3曲目アルカディアは絵画だと思う。唄いだしからファ♯〜ド♯シ♭〜という陰鬱なメロディラインで「暗黒の予感‥」と浮き浮きした気分にさせてくれてフックはバッチリ。但しこの曲は動かない。ずっと佇んで潜んで何かを見つめている曲だ。だから絵画だ。

4曲目「車と女」はゆったりめの16ビートを刻むワウギターとリズムに複雑に歌とストリングスが絡んでくる車と女というより、人力車とおじさんって感じの曲。16を刻むにはとても不愉快すぎるテンポだ。演奏は超難しそう。快活じゃないテンポ。それでもひたすら刻み続ける様は男を感じます。それに乗る私は女の気分。ああこれは幻想の車。サビは空間を切り裂くような細かいリズム。和声も複雑すぎて解決してないのが素敵ですね。そんでもってダバダバ。とても心地よいです。人を刺してしまいそうなくらい‥

5曲目「悪玉」は一番ビックリした曲です。
曲のイントロ8小節はまるで、90年代初頭のガールポップ(くほうるりこ、ひらまつえり等)を思わせるクソなイントロで拍子抜けしてしまいましたが、何しろ歌詞が変なのです。古代の格闘家?の苦悩の物語。格闘家の息子まで出てきます。この曲の成り立ちのインタビュー等は一切読んだことがないのですが、一体何なのでしょう。グラディエーター?何でもってキリンジグラディエーター?本当に聴いてるだけど普通のイイ曲です。まるで日常のちょっとしたせつなさを表したサラリーマンの苦悩と恋。等身大のLOVE&POP‥と言いたくなるような曲調ですが歌詞は「破壊の神シヴァよ!血の雨を降らせたもうれ!」とか言ってんだからもう頭の中は大変です。何考えてるの?楽しすぎます。

6曲目「エイリアンズ」は代表曲らしい。代表曲といえばXで言えば「紅」ZIGGYでいえば「グロリア」バクチクで言えば「悪の華」を思い出しますが、キリンジとってはこの曲。まだちょっと弱いと思う。きっとこれから代表曲はできるのでしょう。別にこの曲が大した事ないわけではありません。「君が好きだよエイリアンズ」まったりと裏声で歌われるこの曲の情緒は心地良いですね。そう。誰もは他人はエイリアン。違う星、違う心に住むエイリアン。だから相手にとっても自分もエイリアン。そんなエイリアン同士が愛し合うこともあるんでしょうね。僕には残念ねがら分かりません。鬱だ。

8曲目「むすんでひらいて」で名曲です。アルバムの中で一番好き。愛してます。
夜、この曲をiPodAAC、192kbps)を聴きながらあるいてました。この曲のテンポとリズムは歩くような感じです。ツンタタツンタタと少しボッサ風味。しかも夜を歩く速度です。だるい。ボーカルも気だるい。トゥトゥトゥリトゥリトゥリトゥリラー〜というハミング?も好きです。心地よさに油断をしていると「むーすんでひーらーいてまわーる」とタンタンタンという性急なリズムに乗せて四度の和音進行(このパターン大好き)の場面に変わる。いつのまにか夜の中に夜が出来て、何も見えなくなって、仕方が無いので座り込んで、この曲が終わるのを待っていた。むすんでひらいて。指切りをしてついた嘘。浮かばれない浮かばれない。
夜はとても長かった。

キリがないのでこの辺でやめます