坂本龍一さんがお亡くなりなりました。自分は氏について語れるような物を持ち合わせていないのですが、とても好きな関連アルバムがありましたので紹介いたします。
それは morelenbaum2/SAKAMOTO RYUICHI の「Casa」です。
これは2001年にリリースされたアルバムで、ボーカルのパウラ・モレレンバウム、チェロの元ジョビン・バンドのジャキス・モレレンバウムの夫妻と、ピアノを坂本龍一さんが努めたものです。
テーマはアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート。そしてアントニオ・カルロス・ジョビンの部屋にて、愛用をしたピアノを用いて録音されたアルバムです。
これは当時にCDを買って、ずっと愛聴をしていた作品です。その頃には自分はブラジル音楽について余り知らなかった、聴いてはいなかった。今は好きになりましたが、その導入としては最適なものであったと思います。
前述の通り、このアルバムはボーカルとチェロとピアノだけを主軸に構成されていて、アコースティックギターは数曲、パーカッションとベースがある曲はごく一部だけという編成になっています。
アントニオ・カルロス・ジョビンの曲は、様々なアーティストがカバーをしていて、そして様々な編成でカバーもされています。今回のような編成は他には無いのかと思います。大きな違いはパーカッションを省いていること、ボサノバならではのベースラインが無いということです。つまりリズムを感じさせるようなものが少ないのです。
しかし、アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽において大切な彼ならではの和声は保たれています。打楽器を極力廃することで、和声の持つ響きは強調されていると感じました。
音の種類も、他の大凡のブラジル音楽と比較したら少ない、その分に3つの音を出すものの和声の配置も考えなければいけないと思うのですが、それも気にならない。
ジャキス・モレレンバウムのチェロの音は、たおやかで伸びやか、優しさと力強さで包み込むのような音色です。時にピチカートで和音をささえ、時にボウイングで低音と旋律を奏で、対旋律でもささえる。
妻であるパウラ・モレレンバウムと寄り添うかのように。パウラの歌声は余計な感情を配して、波に乗るのを楽しむかのように音を表現している、素晴らしいボーカルです。
この2人と坂本さんによる演奏には、そこには無い、楽譜には無いリズムを感じられるような気もしました。
坂本龍一さんのピアノは、それらを後ろから見守るような、ある意味での神のような、決して前に出ない、しかしそこに必要なものを適格に繰り出していくものです。技巧を見せず、それでも実は難しい和音を優しく響き出すことに集中をしているのかなと、感じました。
これが出来るのも、確実に音楽を知り抜いている坂本龍一さんならではだと思います。努力を努力だと思わない、楽しむ力と感じる力があったお方だったんだと、実感しています。ジャンルなどを超えた、真の音楽家であった方ですよね。ほんとうに素晴らしい人生だったんだなと感じました。
ちょっと難しくなりましたが、このアルバムは優しく美しいアルバムです。名盤として世界中で評価をされたものです。ぜひ聴いてみてください。
終